プラモのバトンリレーは前進だけじゃない。前にも後ろにも、横にも行くかもしれない。だからこそ一つのモチーフからさまざまな商品が誕生する。特にスケールモデルにそれは当てはまり、同じモチーフのものが時代ごとに更新されていく。そのパーツを見比べたり、実際に組んでみていろんなことを考えたり、立体物とおしゃべりする時間は俺たちにとってきっと幸せな時間だ。
今俺の中でホットなバトンリレーはハセガワとファインモールド。最近では1/72スケールのファントムがファインモールドによって更新され、さらにはハセガワの定番人気キットとしてラインナップされている「F-2 戦闘機」も、ファインモールドが新作を出すと発表した。このことによりハセガワの定番のキットは一つ古いキットという線が引かれたのかもしれない。でもその線を引くだけだとバトンはもう前にしかつながらない。俺たちは振り返ることができる。そしてプラモを楽しむことができる。新しいものの後ろにいる先輩の背中に近づいてみないか(nippperで俺はそんなバトンリレーをしたいと思い、「花金プラモ」などを通してさまざまな年代に発売されてきたプラモを紹介している)。ファインモールドのF-2の発表は俺をそんな気分にさせてくれた。モデルグラフィックスのマガジンキット(ファインモールド製)の隼一型を組んだ自分は、ハセガワの定番であるレジェンドキット「隼二型」に会いに行きたくなった。
新キットが発売する意味は、既存キットを古いものにするだけではない。昔のキットも棚から目覚めさせてくれる。「お役御免でしょ」って思う気持ちもわかる。でもニューヒーローに会いに行く前に、今までこの世界で多くの人を楽しませてきたレジェンドに会いに行くのも悪くない。プラモは新しいのも古いのも、手懐けやすい奴も変わり者も一緒に棚に共存している。そしてそれを俺たちが選べるから楽しいんだよね。
1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)