

出来のいいプラモ、いっぱいあります。好きな飛行機のプラモ、たくさんあります。だけどさ、「組んでると脳汁がドバドバ出ちゃって収拾がつかなくなるプラモ」となるとこれはなかなか多くない。そんななかでも発売当時にドッヒャーと驚いて、いまもう一度組んだらどうなっちゃうんだろう……と思って組んだらまたウッヒョーとなってしまったのがこれ。とにかくなんか異常なプラモだとオレは思うので、みんなにも組んでもらいたいんだ。
ぶっちゃけラプターってステルス性とスーパークルーズ能力という「この世で一番強い戦闘機であるためには?」みたいなことしか考えてない飛行機なのでカタチ的には味も素っ気もない、と未だに思うんです。さすがに飛んでいるところを見たら興奮するのかもしれないけど、なんというか「人間が必死こいて試行錯誤してああでもないこうでもないとやっていた頃のF1マシンには興奮するけど、コンピューターが解析して『これが正解』みたいな形状になってからのF1にイマイチ興奮しないんだよな」っていう人が多いのと同じような印象。

機体表面にあるギザギザした段差はちょっとオーバーな感じにして、ツルンとした機体に抑揚を与えようとしているのが泣かせる。上の写真見ればわかるけど、機体の上下をバーンって貼ったらほとんど完成、組み立てる喜びなんてほとんど無いんじゃないの?と思うかもしれない。どっこい、このプラモは飛行機プラモ界のマスターグレードみたいなもんで、中身を組んでこそ、その価値に気付くのだ。

中身、と言っても「内部メカ完全再現!組み終わったら全部見えなくなりますけど、見えなくなるところを組むのがイキってもんでしょ?」みたいな話ではない。
ジェット戦闘機というのは空気を吸ってエンジンで燃料をバカスカ燃やして後ろから吐き出す。それ以外のところをコンパクトにすればするほど小さくて軽くて速いメカになるわけだけど、人間が乗るところとそれを補佐するコンピューターを乗せるところ、そして着陸脚とレーダーと燃料をどこかに押し込まなければいけない。さらにこの戦闘機はステルス性を得るために翼の下にミサイルをぶら下げるのではなくて、ミサイルを最大8発を胴体の中にしまわなきゃいけない。
味も素っ気もないシルエットの中に、どうやったらそんなにたくさんの要素をいちばん効率よく詰め込むことができるのか。図鑑を読んでも実機を見ても理解できない工夫が、このプラモを組むと脳に直接送り込まれてくるのだ。まるで『インディペンデンス・デイ』の宇宙人が大統領の脳に直接語りかけてきたように。

最終的に見えなくなるのに内部構造を延々組み立てなきゃいけない、というなら話は別だが、コクピットもミサイルを入れるところも脚収納庫もよく考えたら外部と繋がっている(=蓋を開ければ外気にさらされる)から、トポロジー的には「外側」にあたる。エアインテークやエンジンだって、前から空気が入ってきて後ろに抜けていくのだから、穴の2つ開いたドーナツみたいなもんで、これまたトポロジー的にも「外側」だ。
このプラモで真に外から見えない(だからこそなにも表現されていない)箇所は、レーダーを収めた機首の中とコクピット後方の謎の空間、そして機体の各所に散らばっているであろう燃料タンクくらいのものだ。逆に言えば、それ以外のものが機体のなかにパンパンに詰まっているのをきちんと再現していて、完成後もそれを覗き見られるというのがこのプラモの凄いところなのである。

今回このプラモをおよそ10年ぶりに組んで、当時「いままで中だと思っていたものが外だったのか!」とか、「ラプターだけがなんでこんなに効率的な機体構造をしてるんだ!?」というのに仰天したのとほとんど同じ感動を味わっている。
例えるなら、外観だけで高級住宅に羨望の眼差しを向けるのと、内部の間取りが練り上げられたものであることを実際に内見して知っているのとでは大きく違うのに似ている。この戦闘機がなぜ並外れた能力を持っているのかが、解説を読むのでもなく実際に飛んでいるのを見るのでもなく、ただこのプラモのパーツをパチパチと貼るだけで理解できてしまうというのが恐ろしいところなのだ。
他社の1/72モデルではこうはいかない。ハセガワの、1/48の、ラプターを組む。これをするとしないとでは、ラプターという世界最強の戦闘機における真の理解について天と地ほどの差があると信じて疑わない。
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