説明書は身体を揺らすものだったという話。/ドイツレベル 1/16 バチカン スイス近衛兵

 HIPHOPにおいてフリースタイルバトルというジャンルがありますが、既存の曲のビートを流してそれに合わせて自分なりのラップをします。相手を攻撃したり、自分をカッコよく見せたりして勝敗を決める世界。

 オリジナルの楽曲とは違う解釈なのにめちゃくちゃかっこよかったりして、既定路線から離れる面白さというか、ふわっと宙を浮くような危うさと「どうなる?どうなる?」という先行き不透明さに魅力を感じます。プラモデルにおける説明書はそういう意味ではビートなのかもしれません。

 ドイツレベルの説明書は丁寧に工程が分けられた構成が透明度抜群といった具合の親切さで、今回作成したスイス近衛兵に関しても20に及ぶ手順で執念といってもいいほどに再現された複雑な衣装を形にする方法を示してくれていますが、このキットは実のところ中身はウクライナのICM製。

 ICMのフィギュアの説明書は大抵はA4一枚。どのパーツがどこにつくのかを示したものが多く、あくまでその手順は記載されていません。ゆえに自由に組めるよさがあるのですが、ドイツレベルの説明書はそれを再解釈して作られています。そのとおり作るのか、ICMスタイルで行くのか……この辺が難しい。というか、説明書ってなんだろう。そしてよく考えると私が作るフィギュアのほとんどは明確な工程は書かれていなかった……。タミヤのミリタリーミニチュアの兵士だって、ある程度どの順番でパーツを貼り合わせても問題ないようにできています。

 結果として全体のバランスを見ながら作っていこうと思ったので説明書というビートからふわりふわりと浮かんで、自分が良いと思う順番で作りました。下半身と体を作って貼り合わせて身体のバランスを見る。そのあと両腕を作って……頭をつけて……といった具合。もちろんスイス近衛兵の衣装をどう再現するのかは説明書をしっかりチェック。

 今回作っていて思ったのは私にとってフィギュアは姿勢のバランスが命だということ。それこそがかっこ良さを生み出すカギだと思っていて、バランスを取る工程が楽しいということでした。そのために何をするのか何をしないのかを楽しんでいることが結果的にドイツレベルの説明書ではっきりとわかったというわけです。もちろん、完璧に秩序だった世界の中で遊ぶようなモデリングも十分あり。

 私たちは、いつだって説明書というビートの上で「どう作るか」を考えて踊ったり、考えずに身体を揺らすように身を任せているのかもしれません。それにしてもWorld’s guardsシリーズ、知的好奇心を思いっきり満たしてくれます。今日もどこかで警備に勤しむ誰かに想いを馳せてしまいます。

クリスチ
クリスチ

1987年生まれ。デザインやったり広報やったり、店長やったりして、今は普通のサラリーマン。革靴や時計など、細かく手の込んだモノが好き。部屋に模型がなんとなく飾ってある生活を日々楽しんでいます。
Re:11colorsというブログもやっています。