みんなで作る模型サイト nippperはあなたの投稿をお待ちしています!
詳しくはコチラ!

俺がテレビで見ていた「あのブルービート」が手に入った喜びの話。SMP Kit makes pose 重甲ビーファイター

 戦隊ヒーローかメタルヒーローかで言ったら、自分は断然メタルヒーロー派だった。きらめく装甲と、絶妙な位置に配置されたシルバーのディテール。ガキンチョの頃の自分の脳髄を焼き、「メカっぽい=超カッコいい」という嗜好を植え付けた原因のひとつは、メタルヒーローだったと思う。

 後にそれらのヒーローのデザインを担当していたのは村上克司という伝説のデザイナーで、自分はこの人の手のひらの上でのたうち回っていた子供の一人だったことを知った。この人のデザインが、まあ本当に見れば見るほどすごいのである。硬質で尖ってて超カッコいいのに、撮影用のスーツの都合やオモチャとして商品化するときの都合まで考え抜かれており、描線にひんやりとした質感がある。幾多の子供の脳を焼いてきたデザインは、伊達ではない。

▲シルバーのディテールが入っている部分は塗装済み

 そんなメタルヒーローのデザインを、プラモデルの形で追体験できるゴキゲンなキットが、「SMP Kit makes pose 重甲ビーファイター」である。1995年に放送されたメタルヒーローシリーズ第14作目『重甲ビーファイター』の主人公ブルービートを立体化したキットだ。

▲「ガワの中に人体が入っている」「可動させる必要がある」という点を両立しようと思うと、胴体の中身がこういう複雑なことになるのだ
▲腕の中も、上下の関節パーツをガワのパーツでつなぐ構成になっている
▲パンツ部分は足の付け根のところでバキッと分割されており、大きく動かすことができる作り。思い切りの良さを感じる

 組み上がった状態を一見するとわかるとおり、このキットのプロポーションはフィギュアっぽいアレンジが弱めで、「中に人が入っている」ことが読み取れる人間臭いものになっている。よく見ると胴体の構造などには、「スーツアクターが装甲っぽいコスチュームを着ている」というロボットとも普通の人間のフィギュアとも違う状態を再現するために、設計スタッフが頭を捻ったであろう痕跡がある。そのため、同じ人形なのに組み心地はガンプラなどとは大きく異なる。そしてその甲斐あってか、組み上がってみると「テレビで見ていたあのブルービートが、ちっちゃくなって手元にある」感じがすごく強い。

▲どこがシルバーだったかとか、漠然とメカっぽかった部分がどんな形をしていたのかとかを、改めてジロジロ眺め回すことができるのだ

 そして、ブルービートの正確な立体物が手元に出現することで、おれの脳を焼いたメタルヒーロー的ディテールを舐め回すように眺めることができるのである。例えばメタルヒーローの特徴のひとつが往々にして左右非対称なデザインが施されたことであり、ブルービートにもその特徴が引き継がれている。太ももにビシビシ入ったメカっぽいモールドは左右で形が違い、「ここってこうなっていたのか……」という驚きがある。それでいてパンツ部分などには、アクションフィギュア的なプラモデルとしての割り切りを感じる部分もある。絶妙なバランス感覚だと思う。

 もうひとつベタ褒めしておきたいのが、手首パーツがPVCでできている点だ。「武器持ち手」みたいな名前のくせに武器を持たせるとポロポロ落とす手首が多い中、ブルービートのPVC製手首パーツは樹脂の特性を活かして武器のグリップをがっちりとホールド。一度武器を持たせたら、しっかり握り込んで振り回しても落ちない! 遊びやすい! 感動! 全ての交換用手首がこの仕様になればいいのに……と思う。

 というわけでこのブルービート、メタルヒーロー直撃世代でもそうじゃない人でも、メカっぽいデザインに関心がある人ならば買って遊んで損はないキットだと思う。というか、この仕様で他のメタルヒーローもキットにしてほしい。いや、世代的には『ビーファイター』よりもうちょっと前の、ウィンスペクターとかソルブレインとか、そのあたりが一番ガツンと脳に当たってるんですよ、自分。彼らがプラモになってくれたもう何も思い残すことはないので、マジでお願いします、ホントに!

しげるのプロフィール

しげる

ライター。岐阜県出身。元模型誌編集部勤務で現在フリー。月刊「ホビージャパン」にて「しげるのアメトイブームの話聞かせてよ!」、「ホビージャパンエクストラ」にて「しげるの代々木二丁目シネマ」連載中。プラモデル、ミリタリー、オモチャ、映画、アメコミ、鉄砲がたくさん出てくる小説などを愛好しています。

関連記事