プラモデルを読むための説明書、地歴高等地図のエキサイトメント。

 単に旅への渇望感かもしれないし、オリンピックを通していろんな国と日本のつながりを感じたからかもしれない。無性に地球儀がほしいなと思っていたら、馬渕さんの記事に地図帳が出てきたのでいてもたってもいられずに買ってきた。思えば自分は地図が大好きな子供だったけど、スマホを手にしてから紙の地図を見ることがほとんどなくなっていた。

 Google Mapはたしかに便利だ。しかしそこには経線も緯線も描かれていない。縮尺も表示されないし、右下に小さく距離の目安を示すバーがちょこっと見えるくらいだ。移動や拡大縮小が自在にできて、経路を表示させたりレストランの口コミだって見ることができるけど、紙の地図とは明らかに違う。

 紙の地図は限られた紙面に地理や歴史や自然という切り口から取り扱う区域を選び出し、そこに省略と誇張をもって明解に情報をまとめることが求められる。緯度や経度や縮尺を手がかりに、地球の異なる地域を比べることだって簡単だ。これはわりと当たり前のことのような気がしていたけど、改めて最新の地図帳を手にするとその威力に心底驚かされる。自分の認識がガバガバなところと、手に取るかのようにわかるところのコントラストがすごい。

 模型の説明書で仕入れた知識、模型を作るのに参考にした書籍で見かけた地名。数々の戦場や平和な街並みを思って、自分の作ってきたプラモの生い立ちがわりと立体的に編み上げられていくのを感じる。外国のことなんて何も知らなかった小学生のときと違い、自分が訪れた国や都市といういくつかの点と点を繋いで、考えたり想像したりすることができるようになっている。

 ニュースで報じられている事件や紛争がどんな歴史の上に起こっていて、それはいったいどれくらいの規模のことなのか。「プラモを無責任に作ってはいけない」などと言うつもりはないが、それらを知っていて作るのと知らないで作るのは全然違うことだ、というのも改めて感じる。とにかく、生きてきた時間のぶんだけ脳に溜まった断片的な知識(と、血肉になっている思い出)を地図の上にドバっと放り出してページをめくってみると、かなり詳細にその意味を説明してくれるのだ。

 地図帳というのはただ単に、今の世界のどこに何があるかを描いた絵なのではない。その地域で特筆すべき歴史や地理的な特徴をクローズアップし、(教科書のように積み重ねられる知識としてではなく)ビジュアルに編纂された特別な書物である。

 スマホを手にしてからというもの、さっぱり見なくなっていた地図帳。Google Mapsはたしかに便利だが、模型を楽しむために点と点を繋いでくれる地図帳は、とても素敵な参考書だ。この10年で世界は大きく変わった。この20年であなたは大きく成長した。知識をおさらいし、アップデートして、模型をもっと慈しむ。地図帳はもしかしたら、プラモを作るための第二の説明書なのかもしれない。

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からぱた

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』http://wivern.exblog.jp の中の人。