2016年、タミヤの王道戦車模型、1/35ミリタリーミニチュアシリーズでこいつがやってきた時は本当に衝撃でした。フランス軽戦車 AMX-13です。ひと目見て「え? なにこの戦車?」ってなる人が多いと思います。ちょっとマイナーかもしれませんが、戦後のフランス戦車の歴史においては超重要戦車なんです(過去の海外キット、同時期にTAKOMなどより発売されたことにより現在ではめっちゃラインナップ豊富な車両になっちゃいました)。
この前年の2015年にタミヤは完全新規&専用アフターパーツまで発売するほどのやる気マッスルすぎる「パンサーD型」、もはやFURYといえる念願のタミヤ製「M4A3E8 シャーマンイージーエイト」、「アメリカ戦車兵セット」と第二次世界大戦の極うま煮込みを味わわせてくれました。そしてその次にはソビエトのちょいとマイナーなオープントップ車両「SU-76M」で箸休め。といっても、ここまでほぼ完全新規プラモのオンパレード。
2014年発売の「ナースホルン」以降を僕の中では勝手に「真MM爆誕期」と区切っており、3Dスキャンのフィギュアや、ノリシロが大きくなったパーツなどによってさらに組みやすくなった車両も合わせ、これまでのMMより格段にプラモの質が上がります。
AMX-13はナースホルンから2年後の2016年発売。パーツ精度は現在のキットと遜色なく、パーツ数もコンパクトで組み立てやすさは抜群。キャンパスカバーのディテールなどはメリハリが効きまくっていて、プラモとして超かっこいいです。
フランスは第二次世界大戦で早々に退場してしまいますが、戦車の歴史においては、その母国である英国と同じくらい超重要な位置におります。フランスが開発した機動力と回転砲塔を持つルノーFT-17戦車は、この後の戦車の基礎レイアウトを築き、集団運用される主力打撃兵器としての可能性を世の中に示したのです。戦後、フランスは世界各地の植民地の独立紛争を抱えます。ここで必要になったのが「輸送機で空輸可能。海外に速やかに展開できる軽量小型の空挺戦車」だったのです。大戦後にこんなハードな課題に立ち向かわなきゃいけないなんてマジでドラゴン桜状態。でもやっちゃうのがフランス様。極めてコンパクトでバリエーションも生み出せる軽戦車AMX-13を送り出したのです。
AMX-13最大の特徴はなんといっても砲塔です。揺動式と呼ばれる特殊な砲塔で、簡単に言うと「砲塔上部が丸ごと俯仰し、砲塔下部は基部としての役割」を担うものです。普通の戦車の砲塔は主砲が俯仰しますが、AMX-13は砲塔そのものがガキョンガキョン上下しちゃうんです。キットもこの特徴的な可動ギミックを味わえますが、本キットの一番かっこいいパーツ「キャンバスカバー」を装着すると可動はしなくなります。じっくり悩んで組んでみてみね!
1967年の第3次中東戦争ではイスラエル軍に配備され、エジプトのT-55と激しい戦いを繰り広げます。ヨルダン川西部ではM48とも戦ったみたいです。さらにインドVSパキスタンでもAMX-13は大活躍したそうです。遠くフランスから紛争地域へと送られた小さな戦車は、目指した運用法の見事に成し遂げたと言えると思います。1980年代終わりにはフランス軍での運用も終了。パーツ供給も1990年代終わりには打ち切られているとのこと。戦後のフランス史における戦いにおいて活躍を見せた小さな戦車を、ぜひタミヤのハイクオリティキットで楽しんでください。それでは。
1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)