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プチな中にタミヤの戦車模型のエスプリを凝縮!!「フランス軽戦車 AMX-13」。

▲Petitな戦車にはタミヤのエスプリが詰まっています。タミヤ 1/35 ミリタリーミニチュアシリーズ AMX-13、ボナペティ

 2016年、タミヤの王道戦車模型、1/35ミリタリーミニチュアシリーズでこいつがやってきた時は本当に衝撃でした。フランス軽戦車 AMX-13です。ひと目見て「え? なにこの戦車?」ってなる人が多いと思います。ちょっとマイナーかもしれませんが、戦後のフランス戦車の歴史においては超重要戦車なんです(過去の海外キット、同時期にTAKOMなどより発売されたことにより現在ではめっちゃラインナップ豊富な車両になっちゃいました)。

 この前年の2015年にタミヤは完全新規&専用アフターパーツまで発売するほどのやる気マッスルすぎる「パンサーD型」、もはやFURYといえる念願のタミヤ製「M4A3E8 シャーマンイージーエイト」、「アメリカ戦車兵セット」と第二次世界大戦の極うま煮込みを味わわせてくれました。そしてその次にはソビエトのちょいとマイナーなオープントップ車両「SU-76M」で箸休め。といっても、ここまでほぼ完全新規プラモのオンパレード。

▲2016年4月発売のAMX-13。全長約18cmの中に真MMの面白さが爆盛りされてます

 2014年発売の「ナースホルン」以降を僕の中では勝手に「真MM爆誕期」と区切っており、3Dスキャンのフィギュアや、ノリシロが大きくなったパーツなどによってさらに組みやすくなった車両も合わせ、これまでのMMより格段にプラモの質が上がります。

 AMX-13はナースホルンから2年後の2016年発売。パーツ精度は現在のキットと遜色なく、パーツ数もコンパクトで組み立てやすさは抜群。キャンパスカバーのディテールなどはメリハリが効きまくっていて、プラモとして超かっこいいです。

▲軽量小型の車体に迫力の長砲身! このアンバランス感がたまりません! オリーブドラブなパッケージですが……
▲箱を開けるとダークイエロー!!! 当時はびっくりして一瞬、イスラエル軍で使用されたAMX-13かと思ったほどです。キットはフランス軍のみのデカール構成になっています
▲各部名称もしっかりわかる実車解説の冊子。これを読むとAMX-13が大戦後の世界でいかに駆け回ったのかわかります。これはMMシリーズにラインナップされるのも納得〜ってなりますよ

 フランスは第二次世界大戦で早々に退場してしまいますが、戦車の歴史においては、その母国である英国と同じくらい超重要な位置におります。フランスが開発した機動力と回転砲塔を持つルノーFT-17戦車は、この後の戦車の基礎レイアウトを築き、集団運用される主力打撃兵器としての可能性を世の中に示したのです。戦後、フランスは世界各地の植民地の独立紛争を抱えます。ここで必要になったのが「輸送機で空輸可能。海外に速やかに展開できる軽量小型の空挺戦車」だったのです。大戦後にこんなハードな課題に立ち向かわなきゃいけないなんてマジでドラゴン桜状態。でもやっちゃうのがフランス様。極めてコンパクトでバリエーションも生み出せる軽戦車AMX-13を送り出したのです。

▲エンジングリルの異物侵入防止用ネットはエッチングパーツで表現! ピリッとプラモを引き締めてくれます

 AMX-13最大の特徴はなんといっても砲塔です。揺動式と呼ばれる特殊な砲塔で、簡単に言うと「砲塔上部が丸ごと俯仰し、砲塔下部は基部としての役割」を担うものです。普通の戦車の砲塔は主砲が俯仰しますが、AMX-13は砲塔そのものがガキョンガキョン上下しちゃうんです。キットもこの特徴的な可動ギミックを味わえますが、本キットの一番かっこいいパーツ「キャンバスカバー」を装着すると可動はしなくなります。じっくり悩んで組んでみてみね!

▲キャンバスカバーの取り付け基部パーツの形状&ディテールが最高にかっこいい!
▲これです! 砲塔基部のキャンバスパーツ。ぐ〜っとたわんでいるこの表情がプラパーツで味わえるんですん。すごいですね〜
▲鋳造、溶接とディテールの洪水の砲塔。最高のワンパーツです
▲砲身はワンパーツ。AMX-13の主砲はドイツ パンター戦車が採用していた70口径7.5cm砲KwK42をベースに戦後フランスで国産化された61.5口径75mmライフル砲CN-75-50。こんなエピソードもある戦車なんです
▲塗装&接着が可能なベルト履帯。この時期のキットのベルト履帯はパーツ精度もしっかりしています。このクオリティで最近のキットの履帯もベルト履帯がカムバックして欲しいな〜と思っています。作るのがとてもお手軽なので大好きです
▲車体のハイライトは、このなが〜い雑具箱を貼るところ。このパーツがつくことでより車体らしくなります
▲上部車体は、リヤパネルにあるポリキャップで固定します。接着なしでピシ〜っと収まるのでめっちゃ気持ち良いですよ
▲複雑な砲塔形状を巧みなパーツ分割でクリアしていきます。カチカチとパズルのピースが組み合わさっていくような組み味に唸ります
▲揺動式とはこういうことなのか〜〜とシンプルにわかる砲塔基部との合体シークエンス
▲サイドにでかいピンを差し込んで固定完了。これで砲塔ごと上下に動きます
▲キャンパスパーツは複雑な形状にもかかわらずズレなし……この精度は本当にすごい
▲砲塔の個人的最高ポイントはこの砲塔にモールドされた3つのボルト見たいなやつです。なんですかなね?
▲ジェリ缶ラックをハメたら留め具になった! 頭いいし、これだけでジェリカンラックと砲塔のマッチングがグッとアップ! 素敵です
▲アニキの頭頂部にはたんこぶがあるので、しっかりとヘルメットがハマります。やったぜ
▲完成! このサイドビューがたまらんのですよ
▲組み上がるとさらに素敵なキャンバスの表情を楽しめます
▲転輪内部にはポリキャップが入っているので、取り外しもラクラク。塗装がさらにやりやすくなりますね

 1967年の第3次中東戦争ではイスラエル軍に配備され、エジプトのT-55と激しい戦いを繰り広げます。ヨルダン川西部ではM48とも戦ったみたいです。さらにインドVSパキスタンでもAMX-13は大活躍したそうです。遠くフランスから紛争地域へと送られた小さな戦車は、目指した運用法の見事に成し遂げたと言えると思います。1980年代終わりにはフランス軍での運用も終了。パーツ供給も1990年代終わりには打ち切られているとのこと。戦後のフランス史における戦いにおいて活躍を見せた小さな戦車を、ぜひタミヤのハイクオリティキットで楽しんでください。それでは。

フミテシのプロフィール

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

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