飛行機プラモの歴史を塗り替える超精度/タミヤ1/48ファントムで味わう接着のエクスタシー。

 とてつもない高級レストランのフルコースを食べると語彙が消失して「おいしい……」みたいなことしか言えなくなるわけですが、まさにそれ。タミヤの飛行機プラモ最新作があまりにも強烈な完成度なので、まず貼ってみてください。プラモを組み立てる上で必要な「貼る」という工程がここまでデザインされたプラモはほかにありません。「バチピタ」なんて使い古された言葉の向こう側にある「接着のエクスタシー」が、本キットにはこれ以上ないほど凝縮されています。

 まずはパーツを切り出します。ゲート(ランナーとパーツがつながっている細いところ)は極限までキレイに処理しましょう。デザインナイフでよーく狙いを定めて、平らに、ピシッと削り落としておきます。このキットには「ファジーな位置決め」を許す余地がほとんどありません。接着剤を塗ってムギューっと押さえつけるような組み立てにも向いてません。正確なカタチに切り出したパーツを指定の位置に置いて、流し込み接着剤を必要最低限の量だけ、チョン……。明鏡止水。

 上の写真だと親指の右側に伸びるギザギザしたパターンとパーツの分割線が巧妙に合わせてあるでしょ。こういう「言われないとわからないんですけど!」という気配りが全パーツ、本当に全パーツのアウトラインに渡って施されているのです。なにこれ。さらにパーツの精度が異常なまでに高い。どれくらい高いかというと、仮に置いたパーツがスンッと凹んだところに吸い込まれて、その境目が周囲のスジ彫り(パネルライン)と見分けがつかないレベル。パーツをひとつそこに置いた、という事実そのものが目の前で消失した感覚すらあるのです。信じて。

 そんな精度で合わさったパーツ表面に流し込み接着剤を置いたら、ミクロなスケールで起きる「プラスチック同士が溶けてくっつく」という現象ですら、その秩序を乱してしまいます。ゆえに、ほとんどのパーツにおいて「ここに接着剤を流そう」というヒントが隠されています。例えばここなら、パーツの裏側からチョイ……。

 ピタッ、スンッ、チョイ……。ピタッ、スンッ、チョイ……。日曜の午後を静かに彩るワルツ。必要な工具はニッパーとデザインナイフと流し込み接着剤(と、ちょっと良いピンセット)。ああ、甘美なり。こんなに接着が楽しいプラモがあってたまるか。そうだ、ファントムを作るといつもここに隙間が開くんだ。ファントムはいつもこのラインが揃わないんだ。なのに、なのになぜ……。お前はそんなにもピシッと合うんだ……。

 「スケールモデル」とか「塗装派」みたいな言葉でこのキットをどこか自分とは関係のないところに押し込まず、静かな心で、ゆったりとこのキットを貼ってみてください。完璧にデザインされた秩序が手指を癒やし、脳をほぐし、このカオスな世の中でささくれ立った心をキレイに洗ってくれるはずです。マストバイ中のマストバイ、タミヤ史上最高級の超絶プラモは、すでに店頭に並んでいますよ……。つづきは、また。

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からぱた

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』http://wivern.exblog.jp の中の人。