特濃の時間が短く流れる、ICM製1/32フィギュアプラモの世界

 『その男、甘党につき』という漫画がありまして、チョコレート大好きな主人公の男と周囲の人との交流を描いた内容で、話のなかに絶対甘いものが出てきます。歯医者の回の「歯が全部チョコレートになる幻想」は読んでいて口の中が甘くなるのと、治療の際のドリルの音や指を突っ込まれる感覚や虫歯の痛みなどが一気に頭の中に流れ込んできてなんとも不思議な感覚。好きなストーリーです。

 読んだ後は絶対チョコレートを食べたくなる。しかもいろんなチョコレート。どこでも買える板チョコはもちろん、専門店で一粒いくらのチョコレートだって買いたくなる。たまに思い出しては極甘のチョコレートが食べたいと思うものです。

 チョコレートのようにひとときの甘い時間と、口の中に残るカカオの後味を味わえる趣味があるとしたら、私はプラモデルがまさにそれだと思います。特に人差し指ほどのフィギュアを作るときの、接着剤がプラスチックを溶かし腕や脚が胴体にくっつく瞬間をじっと眺めながら固定する工程は大好きです。

 接着剤がなければまるでくっつく様子もなくバラバラのものが、パーツ同士をつけて頭の中で10秒数えるとぴたっと固定される。そのあと、少しだけ角度を微調整して位置を決めてあげる。10回にも満たない接着という行為に静かに没頭できる少しの時間。

 ICMの1/32の飛行機にまつわる兵士たちはプラモデル売り場でよく見る1/35のものよりも表情豊か。ポーズのつき方も面白いですが、さっぱりとしたディテールが非常にスマートで、雰囲気重視の造形に軽やかさを感じます。

 今日は犬を抱いた兵士を作りましたが、満足げな表情と犬のかわいらしさが素晴らしい。そしてもはや説明書というよりはファッションデザイナーが描くスタイル画のようなタッチのイラストを見ながら作るプラモデルを組み立てるよりもゆったりとした時間を約束してくれます。

 出来上がったらとりあえず好きなところに置いて、ふと目が合うたびに、滑らかに過ぎ去っていった時間を思い出して欲しいです。

クリスチ
クリスチ

1987年生まれ。デザインやったり広報やったり、店長やったりして、今は普通のサラリーマン。革靴や時計など、細かく手の込んだモノが好き。部屋に模型がなんとなく飾ってある生活を日々楽しんでいます。
Re:11colorsというブログもやっています。