キング・オブ・ヒコーキ模型。1/24のメッサーを組んで感じた巨大プラモデルの醍醐味

 10年くらい前に「うわーでっかい!」と思って買ったエアフィックスの1/24 Bf109E。飛行機模型というのは1/72とか1/48スケールが普通で、1/144は「ミニスケール」、1/32は「ビッグスケール」と呼ばれたりしますが、1/24というのはパッケージからしてとんでもないサイズになります(Amazonではプレミアがついていますが、再販されたばかりなので探せばかなりお得に買えますよ!)。

 上の写真に写っている手前の飛行機は1/350で指先サイズですが、後ろにどーんとあるのが1/24のプロペラ機の胴体。当時は「こんなもんどうやって組むんだ」と思いながら、きれいに作る方法とかかっこよく仕上げる方法を考えては「時間があるときにやろう」なんて思って、ハコを開けたり閉めたりしていました。

 いつかの引っ越しのときにそのプラモは作らないまま処分してしまって、10年のうちに「ああ、時間があるぞ!」なんて日は結局訪れず。そう、時間というのは「コイツと向き合うぞ!」と決めたときにだけ、自分の中からブワッと湧いてくる概念なのです。奇しくもエアフィックスが「ヴィンテージクラシックス」という古いキットの復刻再販を盛んにしている流れから、この春に1/24のBf109Eも新品でお店に並びました。やったぜ。

 ハコの中には豪快な大きさのワクがどーんと入っていて、ひとつひとつのパーツが迫力満点。彫刻もパワフルで、イマドキの繊細でシャキッとしたプラモとはまったく様相が違います。とにかく抑揚のある、濃い味のパネルラインは突き合わせた部分と重なり合う部分で異なる表現。びっしりと入れられたリベットとネジの違いも本当にハイカロリーで、見ているだけで元気になります。

 こういうのをビシッと組もうとすると、パーツをイマドキのプラモと同じ精度でシェイプして、足りないディテールや捉えきれていないフォルムを補って……なんて考えちゃいそうになりますが、私は「それならイマドキのキットを買ってくればいいや」と考えることにしました。なにも気にせず、およそ50年前のプラモをその時のプラモアニキたちがワーッとテンション高く組んだように、現代の私もそれを追体験すると、どうなるのか。

 50年前と違うことがあるとすれば、接着剤のスペックです。歪んだパーツに接着剤を塗って、パーツを貼り合わせてから輪ゴムやセロテープで固定して、1日待って……なんてことはもうしなくてもOK。タミヤの「タミヤセメント 流し込みタイプ 速乾」か、GSIクレオスの「Mr.セメントSP」があれば千人力。パーツ同士を指で(パーツがもし歪んでいれば目玉クリップで)つまんだまま、合わせ目に接着剤を流せばあっという間に次のステップに進めます。

 ハコを開けて15分くらいでゴロンと出来上がったのはエンジンとプロペラ。同じスケールのメルセデスと並べてみると、いかに巨大な動力なのかが視覚的に理解できます。もちろん当時のリサーチ力や再現力の限界もあるけど、イマドキの1/72や1/48モデルでも彫刻できないようなメカニカルな佇まいがものすごく嬉しい。この時点で「ああ、勇気を出して組み始めてよかったな」と心の底から思いました。

 コクピットもドドドッと組んで、イケメンパイロットがライドオン。ボディをぎゅっとコンパクトにしてパワーウェイトレシオを高める自動車と、敵の戦闘機をやっつけられるだけのエンジンの大きさから機体の太さが決まる戦闘機の居住性の違いが一目瞭然。

 あまりにも巨大だから、パーツの合わせ目も実機のそれとほとんど同じ。なにより全体が大きいからちょっとやそっとの段差もぜんぜん目立ちません。しかも薄いところは相対的に薄く、細いところは相対的に細く見えるのが大スケールモデルのアドバンテージ。パーツが大きいから細かい作業でイライラする事もありません。ただひたすらに太いハイウェイを全速力でかっ飛ばして、雄大な景色を眺める快楽。ああ、本当に楽しい。

 完成したらエンジンは見えなくなってしまうし、コクピット内部だってパイロットを乗せたらほとんど見えない。でも、大きいから筆を自由に走らせて、ざっくりと色を乗せる喜びがあります。色を乗せることで、淡い水色のプラスチックでは感じられなかった立体感がグッと強調され、自分の組み立てたパーツがワイワイとおしゃべりを始めるような感覚になります。ここまでわずかに2時間足らず。こりゃもう一日あれば完成しちゃうんじゃないのか?

 完成後もよく見えるパイロットは少しだけ時間をかけて、ビールを飲みながらちまちまと筆塗り。男前な彫刻に助けられて、クッキリハッキリとした仕上がりになりました。ここまで合わせ目の処理や複雑な工作はいっさいしていないけど、なんだかクリーンな印象に見えるでしょ。

 大スケールの模型は、アラが相対的に小さく見えるわりに、ひとつのパーツに彫刻された情報量がすごく多いのが特徴。プロペラの曲面や脚柱の華奢な感じ、コクピット側面の板の薄さなんて、やっぱりこのスケールじゃないと出ない表情だよなぁ、とこの状態でうっとりしています。

 エアフィックスからはヴィンテージクラシックスと銘打って、この春1/24のハリケーンも再販されました(同スケールのスピットファイアも近日の発売を控えています)。

 模型屋さんの棚で「わあ、あんなに大きいプラモがあるのか!でも難しいんでしょ?」と尻込みしたことはありませんか? 古くて大きくて、キレイに組むのが大変そう……なんて死蔵している大スケールモデルはありませんか? 大丈夫です。「今!」と決めて、エイヤと組んでみてください。そこには小さな模型では得られない興奮が待っています。炭火で焼いた大きな肉の塊にかぶりつくようなプラモ体験、それをサポートしてくれる現代の接着剤があれば、あなたも確実に「組んだことのある人」になれるはずですから。

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からぱた

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』http://wivern.exblog.jp の中の人。