クセ強ウイスキーと同じように、プラモにも「強烈な匂い」がある話。

 スコットランドのアイラ島で作られるシングルモルトウイスキーに目がない。磯と煙の混ざった香りは当初「臭い」と思ったのだが、慣れてくるとピーティーな(つまりスモーキーでソルティーな)味わいに飢えるようになってしまった。ラフロイグにハマった後に「アードベッグはまだ飲みやすいな」と閾値がバグったり、ケースのデザインに惚れ込んでブルイックラディを買い込むなど本末転倒した趣味となっていくのだが、日常ではブラックニッカを飲んでいるので安心して欲しい。

 ある日、人形町のバーで「BIG PEAT」という奇天烈なボトルが目に入った。聞けばアードベッグ、カリラ、ボウモア、ポートエレン(どれも高級だ!)の4種を混ぜて泥炭のフレイバーを爆発的に味わえる代物だということで、一も二もなくこれを飲んだらイッパツで大ファンになってしまった。自分で買って家に置いておこうと思ったら、これがまた信じられないくらい安い。毎日ガブガブ飲んでいたら破産してしまうが、ちょっといいことがあった日にワンフィンガー(で済むわけないんだけど)味わうくらいなら、わりと長持ちするのもウイスキーの良いところだと思う。

 英国エアフィックス社から1/24スケールのスピットファイア、ハリケーン、メッサーシュミットBf109が再販されると知ったのは去年の秋。飛行機模型としては最大級のスケールとなるこれらのアイテムは今の目で見ると「古いプラモデル」だが、パーツ表面のゴツゴツとしたテクスチャーはイマドキの模型とはまったく異なる、まさにヴィンテージクラシックといった様相で、なによりそこまで多くないパーツ数で全長40cmくらいの飛行機がズドーンと完成するというダイナミズムが素晴らしい。

 じつは15年前くらいにも同じことを思ってBf109を買ったのだが、パーツの合いや凸線の彫刻の処理に恐れをなして結局手放してしまった。しかし、今の俺なら「こういうキットなんだから、このまま作ればいいじゃん」と思える。流石に1/24というビッグスケールではないにしろ、ただ上品で出来の良いメッサーのプラモならほかにゴマンとあるんだ。キットが違うなら、そのキットの味をストレートで味わうという楽しみ方があってもいいだろう。

 ようやく届いたパッケージを開けると、バーンと巨大なパーツがお目見えしてテンションは最高潮。その前に、エアフィックスの箱からはなんとも言えない匂いが放出される。プラスチックが臭うことはないので、おそらくこれは説明書やハコのボール紙に染み付いた匂いだ。もっと言えば、同社の製造工場があるインドの匂いなんだろう。前に買ったブリティッシュファントムを開けたときも、バッカニアを開けたときも、同じ刺激がそこにはあった。

 ドイツの飛行機を模型にするイギリスのメーカーの工場があるインドの印刷所に立ち込めるその芳香(と言っていいのだろうか。正直、100人いたら100人がちょっと顔をしかめる匂いだ)に直面して、BIG PEATのラベルに描かれたおっさんのような顔になる。しかし、何度も経験しているうちに「エアフィックスのプラモを買ったぞ!」というワクワクがその匂いと結びついていることに気づくはずだ。

 肝心のキットの中身はまた今度。パチパチ貼って、アイラのウイスキーでも舐めながら書いてみようと思う。

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からぱた

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』http://wivern.exblog.jp の中の人。