自転車でプラモデル屋さんを巡る、晴れの日曜日。

 仕事が終わってからコンビニで缶ビールを買うくらいしか外出しない日が続くと身体がダルくてしょうがない。しかも精神的にけっこう参ってる感じがして、太陽の出ているうちに身体をめちゃめちゃに動かしたいなという気持ちになる。家にいる間はApple Watchも着けてないしな……。「ジョギングすればいい」みたいなことも考えるけど、朝は寒いしそもそも家の周りの景色には慣れっこで刺激が少ない。もっとわくわくしたい!

 晴れた日曜、午後はまるっと時間がある。Google Mapに「プラモデル」と入れて、ドーンと家から離れた場所まで捜索範囲を広げてみたら、ぽつりぽつりと出てくる小さな模型店。自転車なら10kmや20kmは楽に移動できるし、ちょっと出かけてみよう。ロードバイクだとスコーンと到着してしまう距離も、ママチャリ代わりに使ってる2段変速しか付いていない折りたたみ自転車ならそれなりにくたびれ感もありそうだ。

 知らない通りの知らない景色。こんなところに渋い居酒屋が!こんなところに盆栽の博物館が!と驚きながら「こんど来てみよう」とGoogle Mapにピンを立て、シコシコと自転車を漕ぐ。向かい風が強いとしんどいし、寒いかな……と思って羽織ったダウンジャケットはすぐに脱いでカゴ代わりのバッグにしまう。

 見えてきた模型屋さんは土日だけ営業しているらしくて、優しそうなおばさんが「いらっしゃいませ」と笑顔で迎えてくれる。日に灼けた箱、昨日入荷したような箱、見たこともないようなヴィンテージ的な何か。やっぱり模型屋さんを眺めるのは最高だ。都心の量販店じゃちょっと見かけないガンプラもあるけど、それはどこかの誰かのために手を付けず、前から気になっていたプラモを手にとってお会計。きっちり定価+消費税10%を申し渡してくるおばさんの「20円はおまけしてあげるわよ」の声が嬉しい。

 Google Mapの情報を頼りに模型屋をハシゴ。自転車なら細い路地も楽に走れて、街の雰囲気を感じ取れるだけのゆったりとしたスピードで動ける。地層のようになったガンプラやスケールモデルを眺めて、箱の中身をちょっと見たりしながらイメージを膨らませる。子連れのお客さんが古いキットを見て喜んだり、新しいキットに驚いたりしているのを横目にウームと棚を物色している時間。もし棚の量がいまの100倍あっても1000倍あっても、たぶんずーっと楽しいだろうなと思いながら、緊張した面持ちでレジに箱を持っていく。

 もう一軒は閉まっていて、店頭に貼られたポスターは2020年の4月の発売告知で止まったまま。なにがあったのかは想像するしかないけれど、まあそういうことなんだろう。プラモは自分にとって「今遊んでいる趣味」だから、ノスタルジックな何かと接続させることはしない。ただ、こうした個人経営の模型屋さんがある種のノスタルジーを感じさせる何かだというのは間違いないことだし、そこに新製品がビシーッと並んでいると「あ、いまもしっかり棚の中身が回転しているんだ!」と嬉しくなる。

 自転車で買い物する時は大きなリュックを背負っていったほうが少しかさばるプラモも入るな、と思いながら家までの道のりをえっちらおっちら漕いで帰り、風呂に入ってビールをグビリと飲み干す。ひさびさに気持ちいい汗をかいたし、太ももの筋肉が張っている感じもどこか嬉しい。買ってきたふたつのプラモの箱の中身をもう一度じっくりと眺めて「うん、今日のチョイスも悪くなかったな!」と思えたから、今日は上々のサイクリング日和だったとしようじゃないか。

<em><a href="/author/kalapattar/">からぱた<br></a></em><a rel="noreferrer noopener" href="https://twitter.com/kalapattar" target="_blank">@kalapattar</a>
からぱた
@kalapattar

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』http://wivern.exblog.jp の中の人。