味の調和をもたらすスパイスのように/プラモの佇まいはデカールで10倍魅力的になる。

 グレーのプラスチックに何色を塗ろうか。机の上や頭の中で考えるのもいいけど、模型屋さんの塗料棚でコーディネートを決めるのは思わぬ出会いがあって楽しい。タミヤのライトグリーンとパープルなんて、仲良く番号が並んでいるので「エヴァ初号機の組み合わせじゃん!」と盛り上がってしまい、そのまま飛行機に塗った。

 どっこい、それだけでは「ただ2色のベタッとした飛行機のカタチをしたもの」になってしまって、危うい切れ味みたいなものが生まれない。飛行機はもっとキリッと締まっていてほしいなと思いながら、初号機の色をもう一度見直す。ああ、黒が思ったよりも全体をまとめているし、オレンジがアクセントになっているんだな、と改めて感じる。じゃあ黒とオレンジを塗りますか……となるととたんに腰が重くなるが、もっと簡単な方法がある。

 水転写デカールというのはプラモ特有の文化だが(そして貼るのには少々経験が必要だ)、しかしこれ以上にプラモをグレードアップさせてくれる素材はないと思う。精密で、色鮮やかで、貼ったことを気づかせないほど薄い。手で貼って手で削って手で塗ったアナログな存在に、突然「印刷」という要素が加わると途端に工業製品らしく見えてくる。デカールを貼った瞬間にモヤモヤとした輪郭が急にピントを結び、鮮やかな色彩が全体に調和をもたらしてくれる。うなぎに山椒、もつ煮に七味。僕が「デカールこそプラモデルにとって最大のディテールアップだ」と信じて疑わない理由はそこにある。プラモ作りの経験があまりない人だって、貼ることさえできれば人間業には見えない精密感を与えられる、魔法みたいなもんだ。

▲紫にオレンジ。狙いどおり。自分で塗り分けていたら一生たどり着けないような精度が模型に宿る瞬間。

 黒いところは筆でサラサラと塗って、排気管とプロペラもシルバーで質感を変えてみた。ミリタリーな雰囲気はどこか遠くへと後退し、まるでアメリカの砂漠でかっ飛んでいるレーサー機のような雰囲気。もうすこしライトグリーンの面積が多いほうがそれらしくなるなぁ、なんて考えるけど、このマスタングはここで完成。次に作る飛行機にフィードバックすればいいだけの話。

 もう一度書いておく。僕はデカールこそがプラモデルを腕以上に精密に見せる最上の手段だと思っている。いまは模型店にも無数のデザイン、無数の色調のオリジナルデカールが売られている。たった2色で塗り分けるだけでも、デカールを貼ればそこに差し色が加わり、キレのある曲線や直線が生まれて見栄えはぐっと向上するのだ。

<em><a href="/author/kalapattar/">からぱた<br></a></em><a rel="noreferrer noopener" href="https://twitter.com/kalapattar" target="_blank">@kalapattar</a>
からぱた
@kalapattar

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』http://wivern.exblog.jp の中の人。