「普通」の車のプラモデル、タミヤのフィットを普通に作る

 昨年末に一念発起してエアブラシを買ったので、「せっかくだからカーモデルに挑戦してみようかな」と模型屋さんに行きました。棚にはスーパーカーやスポーツカー、かつての名車のプラモデルがたくさん並んでいますが、車に詳しくないのであまりピンときません。そんな中でホンダのフィットのプラモデルが目に止まり、「この車は知ってるぞ!」と買ってみました。タミヤの1/24スポーツカーシリーズのひとつとしてラインナップされていますが、スポーツカーというよりは今もモデルチェンジを繰り返しながら日本中を走っている名作コンパクトカーです。

 開封すると赤いプラスチックで一体成型されたボディが存在感を放っています。表面はなめらかでパーティングラインやヒケもほとんどありません。街中でよく見る見慣れた形に安心感を覚えます。

 整形色は赤ですが、フィットといえばシルバーなイメージなのでボディにエアブラシでシルバーを吹き付けていきます。初めてなので塗料の薄めかたの具合や塗り重ねの塩梅などがなかなか掴めず苦労しました。シャバシャバに薄めたメタリック塗料を何度も吹き付ける定跡に従うことにし、メタリック=ムズカシス3世とエアブラシ=タノシス大帝が衝突し戦争を繰り返しながらも滑らかな表面になりました。スプレー缶とは違った感覚と仕上がりに感激しました。

 シートや運転席などの内装も、一度は座ったり見たりしたことがあるような馴染みのある形で、質感や匂いが記憶の中から浮かんできます。運転席は海外仕様の「ジャズ」に対応できるよう、左ハンドル仕様のパーツもセットされています。

 内装やシートは「10万km以上乗ってる実家の車」みたいなイメージで、色褪せてクタクタな感じに塗装してみました。説明書の通りに綺麗に塗装するのではなく、普段乗っている車や実家の昔の車などを思い浮かべながら、ここはこういう色合いの方がそれっぽいな、ここは擦れて色落ちした感じにしよう、と塗装を重ねていると時間を忘れました。

 運転席周りやダッシュボードなどもマスキングを繰り返しながら塗装していきます。説明書では黒一色で塗装することになっている部分でも少しグレーを混ぜた方が方がリアルだな、日が当たるとこれくらいの色に見えるな、などと考えながら塗りました。身近な車のプラモデルなので、説明書や作例を参考にするよりも自分の印象や記憶の方を頼りにした方がリアルになると思います。

 ボディとシャーシ、それぞれ構成や合いが非常に良いのであっという間にカチッと仕上がります。ヘッドライトも少し黄ばんだ感じに塗装して、使い込んでいる車を表現しました。それぞれを合体させたら、いよいよ完成です!

 完成すると、街中でよく見かけたり、運転したことがあったりする姿が現れました。あまりに見慣れた感じの「普通」な姿に嬉しくなってしまい、さらにリアルにしようとドアバイザーを自作したり、ナンバープレートや車検シール、車庫証明ステッカーなどを作って印刷してペタペタ貼ったところ、ますます見慣れた感じになりました。 

 これまでカーモデルといえばツルツルピカピカに仕上げるもの、と思い込み尻込みしていましたが、このフィットのおかげで「いかに日常を再現するか」というアプローチで楽しむことができました。憧れの車やかつての名車を自分のものに出来るのがカーモデルですが、日常の当たり前の存在を自分の手で再構築できるのもプラモデルの楽しさだと改めて気付かせてくれるいいキットでした。

 次はどんな情景を作ろうかな、とワクワクしているところです。

C重油
C重油

1991年生まれ。山口県の小さな漁港出身。大きな港に就職し大きな船を見ているうちに船の模型が作りたくなり、フルスクラッチも始めた普通の会社員。