板チョコをバキバキ割って恐竜の骨格やマリオ掘り出すお菓子があるの知ってますか。『キャラパキ』というシリーズでオードリーがCMをやっていたりするんですが、そんならそのお菓子をプラモ的なおもちゃにしてしまえばいいのではないか、とバンダイは考えた。マジで文脈が多層構造すぎる。調査団はアマゾンの奥地をポチった……。みなさんもポチらないとこのお祭りには参加できませんのでリンクを張っておきます。
これが最初からおもちゃなら「たべられません」と書く必要はないんですけど、チョコレート菓子を割って遊ぶという体験を樹脂に置き換えるというヤバめのプロダクトなので、食品と誤認しないよう配慮が発生します。しかも袋を飲み込んだりするのも危ないから注意書きまで多層構造になっていますね。なんてややこしい製品なんだ!
製品の分類上は玩具であり、プラモデルではない……というのはこの製品を取り扱っている事業部とか流通の区分け状の問題なので、とりあえず樹脂でできた組み立てモデルと言う意味ではまごうことなきプラスチックモデルですよねコレ。しかし、見慣れた枠状のランナーがない。あの枠は樹脂をパーツまで流すための道路であり、ついでにパーツがハコの中でバラバラにならないよう保持する機能を持っています。この製品ではランナーのかわりにパキパキ割れるスジの入った板がその役割を果たしているというコペルニクス的転回が起きているわけですよ。ランナーに「地層」というルックが加わることで、何かが起きている。いとヤバし。
縁日で見かける「型抜き」の現代版とも言えるキャラパキというチョコ菓子を樹脂に置き換えて、食べるという要素を諦める代わりに組み立てという要素を入れた、という製品なのですが、手段と目的がもうめちゃくちゃに入り乱れていてすごい。あまりにもエキサイティングであります。しかも地層から掘り出すのはだいたい恐竜だし、クルマとか飛行機みたいなモチーフではあんまり成立しなさそうじゃないですか。人間の骨だと子供が泣きそうだし……。
プラモは組むためのもの、という人に対して「ランナーの状態も製品として完成したものですよ」とお話することは多かったのですが、まさかお菓子のイミテーションでこんな体験をすることになるとは思いませんでした。このキットは明らかに「未組立プラモの状態」に意味があり、そして組んだ後に「これは地層から掘り起こしたんだ」という記憶とともに飾られることになるわけです。大きさも手ごろで造形もガッチリとした陰影があり、見ていて楽しいもんね。
プラモの楽しさは組む前から始まっていて、組んだ後には組んだ人だけの体験が残る。私がいつも感じている本質が、思わぬ方向から肯定されたような気がするちょっと嬉しいキットでした。いやー、すっごいよ。みなさんも、ぜひ。
模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。