
キャラクターモデルの持つ魅力、いや魔力といっていいかもしれません。それは、人それぞれに理想の姿があることでしょう。「あの扉絵がカッコイイんだよな〜」「あの人の原画担当回の戦闘シーンが痺れるのよ〜」なんて、微妙に違う思い思いのイメージがあるものです。実物の無いものだからこそ、そのカッコいい姿は脳内で膨張を続けます。巡らせた空想は思い出となり、考察や妄想とないまぜになっていく……人はそれを「愛着」と呼んだりします。ファイブスター物語の”バング”のプラモデルを作っていて、そんなことを思いました。

時にプラモデルは大勢のファンのイメージを壊さないように、かつカッコよく、かつ組み立てやすく、バランスをとって製造販売されます。

そんなプラモデルメーカーのデザインはまさに、アニメのキャラクターデザインと似ています。アニメ制作の現場では複数のアニメーターが同じキャラクターを書くことになります。そこで統一性を持たせるために、キャラクターデザイナーがアニメ用にキャラの目の大きさや形、色、動くときにどんなポーズをとるのか、装飾のディテールはどこまで書き込むべきなのか、小さくキャラを書くときにどこを省略するべきなのか等など……指針となるキャラクターの設定画を作ります。
つまりこのバングのプラモデルを作るという事は、キャラクター原案:永野護、キャラクターデザイン:ボークス、作画監督:私(モデラー)、というひとつのアニメを作るプロジェクトのようなもの。そう考えるとちょっとワクワクしてきませんか?主に私が。
作画監督である私が、原画から彩色、撮影、背景まで気を配って一つの作品を完成させていくのです。プラモデル制作とは、原作付きの個人制作アニメのような遊びなのかもしれません。

だがしかしですよ、わたしはこのキャラクターへの愛着(妄想)が深い上に、でしゃばりなので余計なことをしてしまうわけです。なんかこの人の作画回だけ顔が全然違うぞ……?という感じです。最近のアニメではそんなことめっきり起こりませんがね。プラモデルならやっても大丈夫。賛否両論ブチ抜いて、真っ向勝負ヨロシクですよ。



いやしかし興味の無い人が見たら「どこが変わったの?」と思うかもしれませんね。しかし私は大満足なのです。わかる人にだけ分かってもらえればいい……付き合いたてのデートでほんのちょっと髪型を変えたことに気づいて欲しい乙女の心境です。(32歳男性会社員)
自分のイメージと100%同じにするなら、0からプラバンやパテでスクラッチビルドすることになります。しかしプラモデルならキャラクターデザインまで仕上がっています。そこにほんの少し自分の愛着を混ぜてやるだけで、時空を超えたスピードで理想の立体物に近づくんですね。プラモデル製作は、「プラモデルと協力して作品を完成させる」遊びでもあるのだなと気づいた32歳の冬なのでした。