
筆塗りは「期待と不安」の反復横跳び。さっと塗料を筆につけて、どんどん模型を塗り進められるドライブ感には「期待と不安」が共存する。筆の震えを心と指で押さえ込み、慎重かつ大胆に攻める。その攻めに模型は応えてくれたり、そっぽを向いたりする。この鬩ぎ合いがたまらなく楽しい。だから「筆塗り」はやめられない。筆を通して模型との対話が始まる。素敵な時間だ。ひとこと「たのしい」のだ。

初めて筆塗りをしようと思ったときは「綺麗に塗ることができるのか?」という思いでいっぱいだった。そして何個も失敗した。エアブラシや缶スプレーのほうが綺麗だし筆塗りなんかもうするもんか!と思った。でも世の中には筆塗りで塗られている模型があり、独特の雰囲気を放っていた。あの雰囲気を纏った物を完成させてみたいという気持ちを諦めることはできなかった。

ある時気がついた。筆ムラを抑えると言われる塗り方や塗料の濃度とか、本で読んだことばかりを気にしていたことを。それができなくて不安になって途中で投げ出していた。「完走」する前に諦めていた。「言われた通りじゃない、自分が納得できる塗面でいいんだ!」。攻める姿勢は楽しさを生む。どんどん塗りが進む。乾いてない場所をえぐったり指紋をつけたり。そんな程度で俺の筆は止まらない。だって俺が塗りたいゴールが見える。筆を進める先には不安ではなく期待しかない!

そしてこれまでの模型が教えてくれた「ウェザリングカラーを塗ると化ける」と。ポワポワだった筆塗りの塗面に一気に「喝」が入る!!

そして何と言っても「デカール」だ。デカールによりマークが入り出すとそれまでとは見映えが全く異なる。これを知っていると筆塗りの不安も軽減される。デカールを貼ればカッコよくなる!大丈夫だってね。


筆で何度も模型を塗るたびにドキドキする。「うまくいったぞ!」「これはやっちまったな〜」そんな気持ちが物凄いスピードで何度も行ったり来たりする。筆を止めてじっと待ってみたり、明るい色をちょっと足してみたり。あなたが筆塗りしながら抱く「期待と不安」が模型を染めていく。自分の感情が模型に乗る。こんなに楽しい時間を独り占めできるんだからプラモの筆塗りは最高に楽しいのだ。

夢中になった時間の机の上はいつもこんなもの。次のプラモに向けて片付けている時間もまた楽しい。次はこんなの筆塗りしたいな〜なんて思いながら、ひとつの模型が無事手を離れていった。それでは次の期待と不安のステージへ。