買ってきて開けてみなけりゃわからない!戦国武将の兜のプラモ。

 「ブォオ〜ブォオ〜(法螺貝の音)。敵将、討ち取ったり!!」くらいのイメージでしか日本史を勉強せず「戦国無双で六文銭くっついてるのが真田だな!」くらいのからぱたです。比較的中国史に強いです。そしてこれはヨドバシカメラで買った真田幸村の兜。兜のプラモって昔から模型屋さんに行くとポツポツ置いてあるけどマジで中身がどうなっているか見たことないし、人の家に行って「お、兜のプラモ飾ってありますね!」とか盛り上がったこともない。しかしロングセラーなのだから一定の需要がある。謎です。謎のプラモ。謎は暴かねばならないし、みんなも箱の中身が見たいはずだ。そうだろう。

 正直申し上げて、このプラモはとてもすごい。リアルグレード武者頑駄無みたいなもんである。武将がかぶっていた兜の造形がプラスチックになっているというのが冷静に考えると意味不明だし、装甲だと考えれば戦車の親戚とも言えるし、しかしプラモデルになるだけの風格というか、モノとしての迫力、アウラがモチーフに備わっていることに異論はないという感じで、見ていてブチアガる。

 箱を開けた瞬間にほとばしり出るジャポニスムの奔流。「オマエ!兜買ったんだから甲冑とかお神輿とか城とかに興味あるだろ!」というアナログで正しすぎるマーケティング手法がプラスチックを覆っており、見ているこっちがくらくらする。何より青とか赤とか金のパーツがチラチラ見えているのでガキンチョの頃にBB戦士を組んだ記憶が勝手に蘇ってくる。オトナのBB戦士だこれは。本当に?

 ゴールデン鹿の角と六文銭、そして「真田幸村」という強すぎるネームプレートが顕現。マジでかっこいい。なんというかこういうプラモは家のお土産置き場ライクなちょっとしたスペースにフィットする。玄関の上、カウンターキッチンの端っこ、ガラスのショーケース。

 鹿角ホーンはタミヤのスミ入れ塗料(ブラック)を塗布してから拭き取るとリアルになると書いてあり、あまりにも具体的すぎるテクニックに仰天しつつ、ゴールデンな鹿の角のリアリティとはなにか、しばし考え込む。そもそも真田幸村の兜にくっついていたのはリアル鹿のホーンだったのか、角を真似て造形したものだったのか、そして鹿角ゴールデンだったのだろうか。正直ガンダムのツノよりもわからないことに戦慄する。戦国時代はSF(センゴク=ファンタジー)なのである。

 全体を構成する赤いパーツは一枚のワクにまとまっており、鹿角ホーンの基部はスライド整形によってちくわ的に処理されているなどゴージャスである。意外とシャープな造形だし、表面のツヤ感も金型をきっちり磨いて仕上げられたものであることが伝わってくる。

  真田信繁is誰。そんなクエスチョンマークにも説明書は優しく答えてくれる。私の兜がプラモになったら本名のプレートと「からぱた」って書いてあるプレートが付くようなものらしい。兜をかぶったことはないが……。これから戦乱の世になればその可能性も否定できない。夢幻の如くなり……(それは信長)。

 地獄的な小ささで同じリズムがリフレインするハードミニマル・テクノのような青いパーツたちは錣(しころ=首プロテクター)を結びつけていた飾り糸をプラスチックにて再現するためもの。パーツ表面に見える微細なケガキ線に沿って80個以上の結び目を貼り付けていくという、千人針的な労苦を買って出るのがプラモデルの深遠な楽しみのひとつである。

 HIMO & NUNOもセットされている。せっかく作った兜、そのへんの工作マットにドデンと置いたのでは真田が泣く。敷布は生活空間と高潔な武士の兜とを隔て、そこに誇りという名の結界を作り出す。紐はよしなにクセを取ってからアゴ紐として結びつける旨指示されている。むずいぞ、兜プラモ。こんな太い紐が入っているプラモは他にないぞ、たぶん。

 そのまま作って飾るもよし、1/4のフィギュアにかぶせてよし、サイケデリックフラワームーブメントを意識したヒッピー的なカラーに塗装してもよしというプラモならではの楽しみを夢想しながら、まずは一旦箱を閉じよう。次にお目にかかる時は、きっと兜が完成したときだ。みなさんはこれをどう作るだろうか。まずは買ってから考えてほしい。その懐は、おそらく考えているのの10倍くらい深いはずなので。

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からぱた
@kalapattar

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』http://wivern.exblog.jp の中の人。