ハコに書いてあること、書かれていないこと/ハセガワ 1/24 スカイラインGT-R(BNR32)の場合。

 最近カーモデルの新規開発にめちゃくちゃな力を入れているハセガワ。各メーカーからさまざまなスケールで模型化されてきたスカイラインGT-Rのなかでも、バブルの終末期を彩るBNR32(いわゆる3代目)が同社からつい先日登場しました。オジサマ世代は直撃、若い世代はワイスピで見た!という感じだと思いますが、ワタシもいつかは組んでみたい〜と思っていたクルマなので嬉しいぜ。

 さて、プラモってのは通販で買ったり模型屋さんで棚からハコを出したり入れたりして吟味するもんですが、そのときに「うおーこれ組みたい!」というジャケならすぐ買っちゃう人もいるし、ハコの側面とかに書いてあるデータを良く読む人もいます。ワタシはあんまり考えずに買ってきてから「あーそうなのか」と作り始めていろいろなことを悟るタイプ。しかし、今回ハコを開けて作り始めて、「ハコに書かれていないこともいっぱいあるなこれ」と思った。ハセガワのウェブサイトに行けば書いてあることもあるし、実際買わないと絶対わからんこともある。

 ということで、案外ハコからじゃわからんことを軸にこのプラモを紹介しようと思うんだな。

 まずボディですね。「BNR32のスタイリングを良く表現しています」とかそういうのはわりと当たり前であってほしくて、ここでのインフォメーションは「エンジンを再現しないキットだ」ということです。カーモデルにおけるエンジンの存在というのは結構むずくて、「入ってると嬉しいけどボンネット閉めたら横転させないと絶対見えない」というのがミソ。

 このモデルは「サクサクッと足回りを組んで、室内を組んでボディをズバーっと乗せれば完成ですよ」という方向で開発されたわけですね。当然ボンネット開けたときにエンジンがまるまる再現されているプラモもあるし、上半分だけ再現して雰囲気を楽しむものもあるし、このBNR32みたいに「ボンネット閉めて作ろうね」というものもある。

 どれも「どこまでやりたいか」というユーザーの満足度と「完成までの手間」みたいなものとのバランスですのでメリットデメリットがあります。これ、ハコを見ただけではわからないけど、結構重要な差である気がします。

 で、ボディをはじめとした外装パーツは黒いガンメタライクな色のプラスチックですが、シャーシとか室内とかはダークグレーのプラスチックで成形されています。クルマのシャーシってだいたいボディと同色で塗られることが多いのですが、ここでは完成後も見える内装の雰囲気とか、ディテールの見えやすさとかをとってダークグレーをチョイスしたんだな〜みたいなことを考えます。

 それにしてもワンパーツでこのシャーシの立体感、すっごいですね。毎度毎度、カーモデルを買うとひっくり返ったシャーシのパーツを見て「いやー、すごいな」とニヤニヤするので、ワタシはもしかしたらワンパーツのシャーシのディテールを買っているのかもしれない。

 エンジンは再現されてないけど、裏返さないと絶対見えないトランスミッションのパーツは執念とも言える彫刻で脳髄を刺激してきます。塗装指示は銀色になっていて、これを銀色に塗るだけで「うおおおお」とテンションが上がります。銀のマッキーペイントマーカーとかでいいから塗ってみよう。すごいぞ。

 だんだんわかってきたんですが、この模型は足回り……つまり裏返した時にめちゃくちゃ複雑な立体物だぞ!というのが伝わる方向にチカラが入っています。一体化されつつも複雑な構造を表現したリアアクスルとか、それにスピャーっとハマるサスペンションとか、組んでいると「なるほど4WD」というのがガンガン伝わってくるのでカーモデル組んだことない人も「へええ」と言いながら貼ってみると良いです。楽しいぞ。

 さっきから出てくるクルマのパーツの名前がわからん!というクルマ離れした若者も大丈夫。なぜなら説明書にはどのパーツがなんなのかちゃんと書いてあるのだ。ハセガワの飛行機模型ではあんまりこういう説明を見たことがないので、クルマは各機能を知りながら組むと楽しいよ!というプレゼンテーションなのだと思って素直に「ふむふむ」と知識を吸収しながら組むことができるのだ。これまた楽しい。

 ハコには書かれていないけど「うわー!やったー!」と思ったのがこれ。窓枠の黒いところを塗り分ける(カーモデルでめちゃくちゃ効果的なんだけどすげえめんどくさい作業だ)のをアシストしてくれるマスキングシールが付属。しかも所定のカタチにカット済みなので、クリアーパーツにペタっと貼れば万事OK。すべてのカーモデルがこうだと地球は28%くらい平和になり、カーモデルの完成率というのがどんどん上昇すると思うので各社のみなさんちょっと値段上がってもいいからこれ入れておいてほしいです(個人調べ)。

 そしてリアに輝くGT-Rのエンブレムはメッキパーツ(小っっっさ!あとその下のNISSANロゴはもっと小さい。肉眼で見えない!)でご用意。Rの部分は実車同様に赤で塗ってちょ、と説明書に書いてあります。ハードコアか。ハセガワさんはこういうところが生真面目。こんなんワタシ塗れない!赤がはみ出したら泣いちゃう!中里毅もビビるこの工程にワタシは正直ひるんだ。助けてくれ……。

 ボーナスステージ!ハコはもちろん、説明書にも書かれていないデカールがここに存在するのです。メッキパーツ貼るのが怖いよ〜という人も、このデカールを貼って50cm離れれば「なんだ、ちゃんとGT-Rに見えるな」と胸をなでおろすことができる。ありがたや。Rのバッジは不敗神話のRなのです。

 とまあ、こんな感じで「何が再現されている/何が再現されていない=だからGOOD/だからBAD」ではなく、「このキットはこんなところにチカラが入っているぞ/ここはわざとチカラを抜いているぞ」とか「実際組むことを考えながらパーツを見てみたらなるほどこんな工夫が」とか「どこにも書いてないけどこれ親切じゃん」みたいなことがプラモにはこっそりと仕込まれています。プラモデル、開発してる人がいろいろと考えて、組む人が「楽しかった〜」とか「おもてなしされた〜」とか「オレうまくなった気がする〜」みたいなことがいっぱい隠れていますので、みなさんもそういうのを見つけたら「これ良いキットですぞ〜!」と紹介してくれると、nippperは嬉しいなと思うのでした。では次回、秋名の峠で会いましょう。またね。

▲完成編はこちらから。
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からぱた
@kalapattar

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』http://wivern.exblog.jp の中の人。