カレーのような楽しみを。戦車模型を塗るという満足

 小学校の夏休みの宿題で「料理を作る」みたいなのがあって、我が家はそこまで熱心な家庭ではなかったので目玉焼きを作ることにしたのだけど、大して面白くもなく、作った目玉焼きを食う父親が「ありがとう」と言ってはくれたものの、なんだか微妙な気持ちだった。「焼いただけじゃん」って。その後、社会人になるまで料理とは大して仲良くなることもなく、一人暮らしを始めるかどうかくらいのタイミングで高校の友達と会ってそのときに少し、料理のことを教わった。

 その後、一人暮らしが始まり「漫画で覚える料理本」を一冊買い、さらに簡単な料理本を手に入れて作るようになったがカレーを作ったときの満足感は忘れられない。今思えば、小学校のときもカレーを作れば良かったのである。野菜や肉を切り、分量通りに水を入れて然るべきタイミングでカレールーを入れて出来上がり。手順そのものは至ってシンプルだが、満足感は目玉焼きよりもはるか上だった。

 先日、タミヤのT-55Aという戦車を作り、初めて塗装を行うことにしたのだけど、シンプルさと満足度はカレーのようだったと思う。ある程度数のある無機質なプラスチックを組み上げて、その後に筆塗りで塗装。ムラが出ても気にならないのは戦車ならではの特性と言ったところで、野菜の切り方が多少ラフでも美味いカレーとあまり変わらない。気分良く塗っていくと筆ムラもかっこ良く、素晴らしい。こうも筆ムラがサマになるプラモデルが戦車なのかとつくづく驚いた。その後、ウォッシングを行おうとウェザリングカラーのサンディウォッシュを全体に塗ると雰囲気の良い戦車が出来上がった。ウェザリングカラーは、カレールーか何かだろうか。

 こうして一通りの手順を味わうと、満足度はとても高く、各々にドラマや発見があった。

 塗料のついた筆を乗せたときの危険な感じや、塗り慣れてきたところでついつい均一に塗ってしまおうとする自分のつまらなさとか、そういうことに出会いながら戦車を作るのは悪くない。そしてウォッシングで一気に全体の雰囲気が良くなる。

 戦車の面白いところはこういうドラマの連なりと起伏の豊かさだ。そして、それぞれ専用の色だとか塗料があるので失敗の可能性は極めて低い。失敗しない模型が戦車だとすら思う。反面、大成功するのが難しいとも思う。塗っているときは「リアルな筆塗りってなんだ?」とか「このウォッシングはどこまでやれば良いんだ?」とかそういうことを考えてた。上手い人は私と違う見え方で戦車を見ているのだろうな。と。

 とはいうものの、店のカレーも家のカレーもそれぞれが美味しいように、自分でやってみようと思って塗った戦車もなかなか悪くないのである。

 私は戦車模型の塗装よりもピカピカの飛行機やカーモデルの塗装に注力した時期があったのだけど、色んな形で経験が活かせたのでプラモデルを作らない人はもちろん、戦車を普段作らない人でもとりあえずカレーでも作るか、という感じで戦車を作ってみて欲しいと思っています。

クリスチ
クリスチ

1987年生まれ。デザインやったり広報やったり、店長やったりして、今は普通のサラリーマン。革靴や時計など、細かく手の込んだモノが好き。部屋に模型がなんとなく飾ってある生活を日々楽しんでいます。
Re:11colorsというブログもやっています。