アンティークプラモを作る時空旅行。プラモ極道、心のカーモデル

▲極道、心のプラモ。お届けします。メリット 1/24スケール レーシングカーキット ジャガーDタイプ

 「英国王のスピーチ」という映画に、とても印象深いシーンがある。

 それは、クライマックスの力強い演説のシーンではなく、中盤の、プラモデルを巡るアルバート王子と主治医のやりとりだ。

 「一度プラモデルを作ってみたかったが・・・父が許さなかった・・・」

 つくりかけの複葉機のプラモデルを手にしながら、子供の頃の辛い記憶と向き合うアルバート王子。

 映画の中で、プラモデルは庶民の娯楽として登場する。キットは、フロッグ社の1/72ペンギンシリーズであろうか。リビングのテーブルの上に広げられた古新聞と、接着剤や塗料の瓶。気の向くままに筆塗りされたプラモデル。それは、1936年の光景のはずなのに、強く共感を感じた。「ぼくの子供の頃と一緒だ」と。

▲英国のフリーマーケットでの出会い。先代のオーナーはどのような思い出この模型を作ったのか?ボディは成型色のまま。タイヤを塗れば車に見えるという先代オーナーの声が聞こえる

 英国のフリーマーケットにいくと、何十年も前に子供が作ったと思われるビンテージプラモデルのジャンク品が売られている光景をよく目にする。運が良いと、大変希少なメリット社製1/24スケールのジャガーDタイプだって、ほんの数ポンドで手に入れることだってできるだろう。ただし、それらのほとんどは、部品が外れていたり、筆塗りで謎のゼッケンが描かれていたり、接着剤をぶちまけた跡があったりと、初代オーナーの個性が存分に反映されていたりする。

 わたしがそんなジャンク品を愛おしく思い、つい何度も買ってしまうのは、半世紀以上前に異国に存在した、いわば「模型仲間」の存在を生々しく感じることができるからだ。それはきっと彼(彼女?) が、テーブルに広げた新聞紙の上で完成させた、自慢の模型だったに違いない。

 このメリット社製Dタイプのプラモデルは、実車が現役だった1950年代中頃から60年代に発売されたものらしい。よく観察すると、グリルの横に小さな補助灯がついていて、ヘッドレストカバーにはテールフィンがついていない。これはDタイプの中でもプロトタイプ、シャシーナンバーXKC401だけにある特徴で、故に後年マニアを唸らせるひとつの要素でもある。決して忠実な縮尺ではないが、ミニマムな部品構成で、XKC401の特徴をとらえた素晴らしいキットだ。 

 偶然、Dタイプのジャンク品をもう一つ手に入れた。それは、ゴッホのような荒々しいタッチで全体を緑色に塗られ、グリルの周りを黄色い塗料で塗られ、ライトの部品が欠品したものだった。わたしはそれをシンナーの海に沈め、僕の物とした。

 ボディ形状を改造して、ピカピカに塗装して、サー・ウィリアム・ライオンズの自作フィギュアを載せて、XKC401テスト走行時の姿を再現してみた。

 とても楽しい工作だったが、後になって、友達の作った模型を台無しにしてしまったような、少し後ろめたい気持ちになった。これからも大事にするよ。

■英国王のスピーチ [Blu-ray] 2200円

プラモ極道
プラモ極道

愛知県出身カリフォルニア州サンノゼ育ち。かわいいネコちゃんと甘いケーキに目がない。

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