「アルティメットニッパー」という超高性能ニッパーでモデラーから絶大な支持を集め、その他数々の模型用ツールをリリースしまくっている新潟のメーカー、ゴッドハンドから「神ふで」というシリーズが新たに発売されました。筆塗りというのはみんなが気になるトピックのひとつ。われわれnippperのもとにもゴッドハンドさんから「使ってみてちょ〜」とサンプルを提供いただきましたので、忖度なしでレビューしていきたいと思います。今日は19種の「神ふで」のなかから、特殊な筆を4本チョイスしてお届けいたします。
今日紹介するのは左から「神ふで つんつん筆M」「神ふで つんつん筆S」「神ふで スミ入れ筆」「神ふで ドライ筆」の4種。スミ入れとドライはなんとなく想像できますが、つんつん筆って何?
エグゾフレームはつや消しスプレーを吹いたのと、手持ちの武器にはつや消しの黒を塗ってあります。で、まず試したのはつんつんMとつんつんS。穂先はかなり短く、ものすごく毛が細くてミチミチに束ねられています。毛先を割ってみなければ、筆というよりひとかたまりの円錐形をしたシリコンチップと間違えちゃうような質感。
この筆は弾力がすごく、押し付ければグワッと広がるという性質があるため、豪快にタッチを生かして面を塗ることもできます。今回はパーツのエッジをつんつんして塗装ハゲ風の表現をしてみましたが、本当に繊細な点描をしたい場合は先端の先端だけを使うのが良さそうです。
この筆でできることだけを比較するならば面相筆でも代用できるかもしれませんが、筆のコントロールが個人のスキル次第になってしまいます。ところがこの筆はとにかく、「つんつん筆」と書いてあるので、「つんつんするものだ」と脳が勝手に判断して、引っ張ったり伸ばしたりせずに、つんつんつんつんして描いていくことになるというのが面白い!商品名に引っ張られて使い方が規定されているのが不思議な感じです。面相筆だと穂先でも腹でも使えますが、この筆は先端からどこまで穂先を面に押し込むかに集中して使うことになるでしょう。
つんつん筆の先端を使えば、丸い形状のモノを塗るのが細長い筆よりもかんたんです。たとえば上のようなセンサーをちょい〜と塗ろうとすると、穂先の長い筆は毛がぐいっと曲がってうまく丸を塗ることができないことがありますが、つんつん筆ならたっぷりと塗料を含ませてグッと押すように塗ることができます。
スミ入れ筆は穂先の長さが12mmもあり、とんでもなくまとまりの良い毛なのに驚かされます。写真を見ても分かる通り、まるで一本の棒の用にまとまったまま、グググとしなってかなり硬い。まとまりの良い毛のなかに塗料をたっぷり含むのでスミをどんどん流すことができ、穂先が乱れないし適度なコシがあるので狙ったとおりにスミ入れができます。
正直「スミ入れなんか瓶のフタについてる刷毛とかそのへんの面相筆でええやろ」と思っていたのですが、このカキーンとまとまった硬い毛がありえんくらい塗料を含むという神ふでの特性はかなりヤミツキになります。スジボリや穴、出っ張ったところの周囲に筆の先端をピトッと当てるだけで周りにスーッと色が回るし、これをきわめてリズムよく、長い時間楽しめます。これはいいわ……。
最後にお見せするのがドライ筆。これはものすごく毛が細くて柔らかい!先端も穂先がピュッとまとまっているのではなく、ラウンドした形状になっています。この形状と柔らかさによって、ボワッとボケた雰囲気のドライブラシ(乾燥寸前の塗料をパーツの表面にごく少量なすりつけることで、筆で”描く”のではなく、ふわっと輪郭のボケた表現をする技法)が可能になるとのこと。
ボケ感を知るという意味ではこの「武器へのドライブラシ」は少々意地悪だったかもしれません。まあでも、火器類ってガンメタリックを塗るとどうしても嘘くさい感じになるのがあまり好きじゃないので、こうやってつや消し黒の上から銀で鈍く光らせるとディテールが浮き立ち、渋い金属感が出るので好き。
やはりドライブラシは塗料のコンディションやディテールの強弱によって効果が大きく違うため、私的にはコントロールを失敗した、という印象です。こういう大きさ、形状が対象の場合だともうすこし大きな筆でストロークを大きくしたほうがまろやかな仕上がりになるかな、と思いました。たしかに、これだけ細くて柔らかい毛だと排気管の後ろが黒く煤けているのを注意深くカサカサカサ……と表現していくといった用途のほうがフィットすると思います(これは4回に分けてお届けするレビューのどこかでリベンジしますね)。
筆というのは使う人のスキルによってその性能が大きく変わるツールです。塗料のコンディションと筆先のコントロールさえできれば、安い筆でも高い筆でも、やりたいことはだいたいできる。しかし、スキルに不安がある場合はシーンに合わせて適切な筆を選ぶことが大事です。
今回紹介したゴッドハンドの神ふでは、穂先の形状が目的ごとにビシッと設計されていて、毛の質やまとまりかたまできちんと考えられているからこそ、「この作業にはこの筆が向いているのだ」と、知識やスキルのない人でも選び取ることができます。つんつん筆は「筆のカタチ」もさることながら、「どうやって使うか」までを商品名に盛り込んでいるのがすごいですし、スミ入れそのものが楽しくなったり、ドライブラシをより繊細にやってみようという気持ちになるのは素晴らしいこと。みなさんも、なんだか自分の作業にフィットしない筆にもどかしい思いをしているときは、特訓よりも「筆を専用のものにしてみる」という選択をしてください。ぜひ!
■ゴッドハンド 神ふでシリーズ つんつん筆M キャップ付 模型用筆 GH-BRSP-TTM
■ゴッドハンド 神ふでシリーズ つんつん筆S キャップ付 模型用筆 GH-BRSP-TTS
■ゴッドハンド 神ふでシリーズ スミ入れ筆 (キャップ付) GH-BRSP-SI
■ゴッドハンド 神ふでシリーズ ドライ筆(キャップ付き)GH-BRSP-DR
模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。