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【レビュー】京子のジャパンを作ったら、楠みちはるの絵がもっとカッコよく見える!/アオシマ 1/24『シャコタン☆ブギ』

 ハコを開ければパープルのボディカラーが転がり出てきてとても嬉しい! 白いボディだったら、”京子のジャパン”という最終イメージとの間にいきなり「塗装」という工程が立ちはだかります。たとえ塗るつもりであったとしても、まず紫のプラスチックパーツが目に入れば「ひとまずこのままでも大丈夫かも」と思えるのは大きいことです。

 そこへオーバーフェンダー、板っぱね、外付けオイルクーラー、メッキの深リム弥生ホイールといったパーツが並んでいます。ベースは名作の呼び声も高いアオシマのHGC211スカイライン 4ドアですが、やんちゃなカスタムパーツによって『シャコタン☆ブギ』に登場する京子のクルマへと変貌するプラモデルです。

 シャシーを裏返すと、パーツを大量に組み付けなくてもそれっぽい見た目になる深い彫刻が。排気系、デフ、ミッション、フロアの凹凸まで一枚の部品へ景気よく彫り込んであって、黒いプラスチックのままでもクルマの裏側としてかなり賑やかです。もともとは昭和50年代に開発された金型なので古風に見えますが、シャシ裏を細密に分割するハセガワに対し、立体感のある彫刻でなるべくパーツ数を抑えるのはいまのアオシマの新キットにも受け継がれているコンセプト。アオシマ製カーモデルの持ち味は「”省略”と”物足りなさ”は違うものなんだぜ」と語りかけてくるところにあるなと毎度思います。

 シャコタン・ハの字を表現するために、金属製のリベットをナナメに固定するプラパーツの構成があまりにも新鮮です。ベースキットは前輪をリベット、後輪を金属シャフトで保持する設計なのですが、このキットでは不思議なカタチの追加パーツによってリベットを強引に傾けるという仕組み。こんなファジーな組み味でちゃんと4輪接地するのか……? と少々不安になりましたが、ボディを載せてみればなんの問題もなく、ビシッとアライメントが決まることに驚きました。古いキットに新規設計のパーツを組み込んでルックを変えるという商品そのものが、古いクルマに部品を足して自分の欲しい姿へ持っていくカスタムカーカルチャーを体現しているようで最高です。

 室内のパーツはシンプルだし、床には電池ボックスなど昔の設計を感じさせる造作も残っています。しかし個人的には、これくらいのパーツ構成が「プラモデルを作っている」という感覚と、「カタチがみるみる出来上がっていく」という感覚のちょうどいいところにあると感じます。クルマのプラモデルだから室内を徹底的に作り込むのももちろんいいんです。でも最後にはボディを被せるのだから、とにかく早くスタイリングを見たい……!というならそこまでやらなくてもOK。「どこまでやるか」を作る人が決められるくらいのあやふやさと密度も、プラモデルの良さだと思うのです。

 パッケージには漫画のコマとカラーイラストがあしらわれていて、眺めていると京子に惚れそうになります。そして完成した模型をメインイラストと同じくらいの角度に置いて写真を撮ると……おお、ちゃんとスタンスを表現できているじゃん。ところがよく見ると、イラストでは左前輪とフェンダーがノーズの横からはみ出て描かれています。実車として考えればありえない見え方なのだけれど、そのおかげでクルマのキャラクターがガボーンと強調される。模型という立体を横に置いたことで、楠みちはるが現実のクルマをそのまま描いているのではなく、カッコよく見える方向へ形を押し出していることに気が付かされるわけです。プラモデルを作った結果、漫画の絵が前よりよく見えるようになるというのも面白いもんでございます。

 カーモデルにも古いやつ、新しいやつ、細かいやつ、「お手軽」を謳ったやつと、本当にたくさんの選択肢がある昨今。しかし私は、こういう’80年代あたりのアオシマのカーモデルのありかたが結構好きです。クルマの模型として必要最低限の部品があり、少々あやふやなところとは接着剤を片手に対話して、組みながら「このキットはこうしたいんだな」と意図を探っていく。そして既存のボディやシャシーへ社内外で蓄積したホイールやエアロや小物を組み合わせ、ひとつの強烈なキャラクターを作る。ひとつの仕様を突き詰めて再現し、絶対に組み間違えないよう設計された現代の最新モデルとはまったく違う楽しさがここにはあります。カーモデルってどんなものだろう……と手をこまねいている人も、『シャコタン☆ブギ』を知らない人も、ぜひともこの紫のボディを手に取ってください。

からぱたのプロフィール

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

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