
この夏は友達に毎日ちょっとずつ『エリア88』の単行本を貸す日々を過ごした。初見の人の感想を聞くのは嬉しく、毎朝本棚から次の巻を手にとって、パラパラと読み返すのも楽しいものだった。新谷かおるの描く戦闘機は実物よりもうんとグラマラスに誇張されているから、実機通りのプロポーションを持ったシャープなプラモデルでそのイメージを再現するのはとても難しい。そう感じた高校時代からいまに至るまで、エリア88のマーキングを施した戦闘機模型は作らないようにしていた。
このところエリア88関連の戦闘機プラモをさかんに展開しているハセガワから突如として発売された1/48スケールのF-20タイガーシャークは、ひさびさに漫画を読んで火の付いた私の意思をよろめかせた。少々値は張るが、思わず手にとって会計を済ませ、パッケージを開ける。ちょっと大げさな言い方かもしれないが、執拗に彫刻されたパネルラインとリベット、そして1/48ならではのサイズ感は「これならエリパチの飛行機として作ってもいいかも!」と思える迫力を備えていた。

ハセガワのF-20といえば1/72スケールのキットが40年以上にわたり定番となっているが、1/48スケールのものは台湾のフリーダムモデル製キットに風間真のパーソナルマークを始めとしたマーキングをデカールとして追加し、ハセガワ製品としてリパッケージしたものが2019年に発売されている。今回はパッケージのロゴ周りが変更になったほかはキットとして同一のものであり、事実上の再販と捉えてよい内容だ。

プラスチックはかなり柔らかく、ともすれば欠点と捉えられそうな太めのパネルラインもハセガワ製の飛行機モデルと違って「キャラクターモデル的な派手さ」の演出にひと役買っている。主要なパーツを切り取って仮合わせしてみると合わせ目に少々ラフさが感じられるが、基本的なアウトラインはしっかりと繋がっているのが見て取れる。端正に合わせ目を消してパーフェクトな仕上がりを求めるとなれば少々骨が折れそうだが、そこまでせずともちゃんと風間真の機体に見えるものができれば満足感は得られるに違いない(余談だが、目立つ合わせ目の部分には濃紺が塗られた機体なので結果として合わせ目が目立ちにくくなるだろうという打算もある)。


コクピットや豊富な武装類も濃い目の味付けで、とにかくディテールフルだ。パッケージに描かれた機体は増槽を装備しただけの比較的クリーンな姿だが、自分なりにミッションを想定して武装を搭載するのも楽しいだろう。なによりいつものハセガワ製品と同じフォーマットでまとめられた組み立て説明書は組み立てや塗装の手順がイメージしやすく、数多くの海外製プラモデルを日本のマーケットに流通させてきた同社の経験値が生かされている。

問題となるのは白と紺の境界に入った細いストライプがデカールで再現しなければならないという点。もちろんこの機体デザインを表現するのであればこうするほかないのだが、塗り分けラインをデカールの形状に合わせてマスキングし、その境界にビタッと合わせてデカールを貼るという少々高度な技術が要求される。そうした意味では少々手強そうではあるが、私が40年近く避けてきた「エリア88の飛行機を作る」という宿題を、このF-20ならようやく始められそうだ。