
すでに公開済みの記事で新規金型の巨大なスーパーパックだけを先に組み、「ハセガワにはまだ1/48のVF-25がないのに、その強化パーツだけ先に出てきた!」と大騒ぎしてしまいましたが、眼の前にある料理を差し置いて次の献立を想像している場合ではありません。そろそろ主役であるVF-19EF/A本体も組んで、この巨大なプラモデルの全貌を味わうことにします。

箱から取り出した胴体の上下パーツを見て、やっぱり笑顔になってしまいます。デカい。とにかくデカい。「完成時の全長388mm」という数字が、ほとんどそのままひとつのプラスチックパーツになって眼の前に出てくる豪快さ。ハセガワのYF-19は1/72で見慣れているつもりでしたが、1/48になると単純に1.5倍しただけとは思えないほど印象が違います。1/72ではシャープで少々無機質にも感じられたアウトラインのなかにも、緩やかなRや面のふくらみ、場所によって微妙に変化する曲率を演出として盛り込んでおり、YF-19という飛行機に対する印象すら変えてくれます。
サイズが大きくなればディテールがよく見える、というだけの話ではありません。小さい模型では一本の線に見えていたところが面になり、面だと思っていたところに起伏が現れます。スケールが変わることで、知っていたはずのデザインの読み取り方も変わる。巨大なプラモデルには、ただ迫力が増す以上の効能があるのです。

ランナーを眺めていると、ハセガワらしい緻密でリアリティのある着陸脚のすぐそばに、完成したファイター形態ではほとんど見えなくなるバトロイドの頭部がくっついています。実在するジェット戦闘機を何十年も模型化してきたメーカーの手付きで作られた脚柱と、その横に当然のように配置された人型ロボットの頭。現実と非現実をランナーの上で反復横跳びしているようで、こういう景色を見るたびにハセガワのマクロスプラモが持っている独特の面白さを見る思いがします。

バトロイド形態では脚となる左右のエンジンナセルも、内部にはメカニカルな彫刻がびっしり。このイサム・スペシャルではそれを隠してしまう外板のその外側をさらにファストパックが覆います。「ここにはこういうものが入っていた」と自分だけが知っている時間も完成品の一部なのであります。隠してしまう前に、しっかり眺めておきましょう。

あとは大ぶりなパーツをガンガン合わせていけば、長いノーズと前進翼を持った巨大なVF-19が机の上に出現します。そこへ例のスーパーパックを装着します。片側だけでも1/72のジェット戦闘機ひとつぶんほどのボリューム感を持つカタマリを、薄い主翼を上下から挟むように取り付けることになり、「いやこれ、ほんとうに正しい位置で保持できるんですか?」と少々不安になります。
ところが主翼グローブの付け根には、スーパーパーツの内側にピタリとハマる「カエシ」のパーツを貼る指示があります。そこへスーパーパックを引っ掛け、後端から固定用パーツを差し込むと、あれだけ巨大で重そうだったものが所定の位置にガチッと収まります。力ずくで貼り付けるのではなく、わずかな引っ掛かりと位置決めによって巨大なパーツが固定されます。なんなら接着しないで着脱式にすらできます。この組み味がすげえ気持ちいい。

完成した姿を眺めていると、このプラモデルの面白さはデカさだけではないことに気付きます。YF-19が主役として飛んだ『マクロスプラス』は1994年から展開された作品です。それから17年後の2011年、『劇場版マクロスF ~サヨナラノツバサ~』に、そのYF-19の系譜に連なるVF-19へVF-25用のスーパーパーツを装着したイサム・スペシャルが登場します。古い機体に新しい時代の装備を載せ、かつてのパイロットが新しい物語に顔を出す。マクロスという作品は昔から、こうやって機体や装備や人物を超時空させるのが本当にうまいのです。
さらにプラモデルの世界では、もうひとつ別の時間の重なりがあります。ハセガワが最初期のマクロスキットとして1/72のYF-19を発売したのは2002年。1/48のYF-19が登場したのは2009年です。その後、ハセガワは『マクロスF』のVF-25を1/72で模型化し、そのスーパーパーツを使った1/72のVF-19EF/Aを発売。そして2026年には、2009年生まれの巨大なYF-19に新しいパーツを足し、ついに1/48のイサム・スペシャルが成立するに至ったわけです。

しかも面白いことに(しつこく書くけど!)設定では「VF-25から持ってきたスーパーパーツ」なのに、ハセガワにはまだ1/48のVF-25がありません。つまり現実のプラモデルでは、未来の機体のための装備だけが先に誕生し、17年前のYF-19へ装着されている。劇中で行われた「時代も機種も違うパーツの流用」を、ハセガワ自身の製品史が別のかたちで再演しているわけです。

マクロスのメカが面白い理由はたくさんあります。変形すること。実在機の匂いがすること。そして、時代を越え、機種を越えて武装や強化パーツを組み合わせれば、まだ見たことのない姿がいくらでも現れること。このVF-19EF/Aは『マクロスプラス』と『マクロスF』の時間をつなぎ、2040年と2059年をつなぎ、さらに20年以上にわたるハセガワ製マクロスプラモの歴史まで積み重ねた文脈のミルフィーユとしてここに存在しています。
全長388mm、全幅309.5mm。数字だけでも充分バカでかいプラモデルですが、プラスチックの重さ以上にアニメの時間と架空世界の時間、そして現実のプラモデルが積み重ねてきた時間の重みがこのシルエットを形作っていると思うと、めっちゃエモいわけです。こんなものを机の上に置けるんだから、マクロスのプラモデルはまだまだ面白いんだよなぁ。そんじゃまた。