
あまりにも白のプラスチックの色合いが良いのでそれだけで記事を書いてしまったエクスプラスの綾波レイ。完成写真は商品画像として提示されているし、おそらく自分が組んでもほとんど同じものになるだろう。原型がよく写し取られたプラモデルであること、色分けが優秀であることは自分が実際に組まなくてもしっかりと見て取れる。ならばやはり、組んでいる途中の景色に驚きを見つけるのがプラモデルという旅の醍醐味であるはずだ。
このキットのもうひとつの驚くべきポイントは、頭部の造形である。額、鼻、口、アゴの造形はいわゆる美少女フィギュアの文脈で確立した様式美的曲面で構成されているが、アゴのラインのサイドはエラのように大きく膨らんでいるのが異様だ。後頭部も実際の人間のようにうなじがあるわけではなく、ピークがド真ん中にある風船のような造形。およそ頭蓋骨の造形とは全く異なる、このキット独特の設計だ。

髪の毛は後頭部が左右二分割、前髪は重なりを表現しながら綾波特有のヘアスタイルを再現するために5分割されている。毛先こそシャープだが、表面のディテールはそこまで深い凹凸を入れず、少ない分割で髪の毛が仕上がるよう工夫していることがうかがえる。そしてこれらのパーツを組み付けていくと、先ほど示した「風船のような頭部に顔面がくっついているような設計」の意味が明らかになる。

髪の毛パーツの裏面にはリブ(桁のようなもの)が立っており、これが髪の毛のボリュームを決めている。フィギュア造形を志す者はだいたい「毛髪のない状態の頭蓋骨を感じさせる頭部」を仕上げてから髪の毛を造形していく……という手順を踏む場合が多い(フィギュア製作の指南書でもそう示されていることがほとんどだ)。しかしこのキットは先に完成した「毛髪込みの頭部」があり、それからはめ合わせのためのダボや桁の高さの都合を優先して頭部と毛髪を分割しているのではないだろうか。だとすれば、見えないところを「造形」するのか、「設計」するのかという違いが、この不思議な肌色の頭部パーツに現れているのだ。

胴体、腕、脚はそれぞれプラグスーツのデザインに見られる色の切り替えやシーム状のラインを目安に分割されている。出色なのは背中から腰にかけての豊かなS字のライン、そして左の脇の下を3分割して艶めかしくもリアルな凹凸を表現していることである。こうした部分は完成後も見えるから、造形を最大限活かすための設計を取り入れている。

エクスプラスのプラモデルはとにかく台座に恐ろしいほどのパッションがこもっている。この綾波も同様で、瓦礫のようなものが突き立てられた地面があり、ひしゃげた水道と蛇口が伸び、それらをパーツ化するために巨大なランナーを2枚も費やしている。

台座はただの情景ではなく、完成後に浮遊感あるポーズでディスプレイするためにちょっと不思議な方法で綾波を保持してくれる。スライド金型を使って大胆に成型された長いロンギヌスの槍も先端が地面に付いているわけではなく、あくまで綾波が自分の力で持っている、というのが完成してからわかったことだ。

完成した姿だけを見ていると、「綾波のフィギュアを分割し、組み立てられるプラモデル」という表層的なことしかわからない。しかし実際にパーツを眺め、組み付けていくとそこかしこに驚くべき工夫があり、こだわりがあり、ガレージキットとはまた違った「プラモデルならではの工夫」「プラスチックという軽くて丈夫な素材ならではのメリット」といったポイントが浮かびあがってくる。モチーフが違うだけでなく、一作ごとに意思を持って新たな試みにトライし、それぞれの造形をいかに面白く組み、鑑賞してもらうかを考えているエクスプラスは、「フィギュアのプラモデル化」を今日も少しずつ進化させている。