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【レビュー】プラモデルの白のなかに潜む「紫の企み」/エクスプラス 綾波レイが仕掛けたアヴァンギャルドな色彩表現

 プラモデルというフォーマット成熟を迎えた現代において、私たちはキャラクターキットを評価する際、どうしても目に見えやすい記号に目を奪われがちになる。どのようにパーツが分割されているか、可動範囲はどれくらいか、あるいは武装や表情パーツはどれくらい付属しているか、といったファクターはわかりやすい。エクスプラスの新作、綾波レイをとっても、さらっと見ただけではいかにもエクスプラスらしい固定ポーズのプラモデルとして消費してしまいそうになる。

 さらに言えば、エクスプラスには『勝利の女神:NIKKE』のアリスという明確な先行作が存在しており、その系譜を踏まえれば「なるほど、あの精密な固定ポーズの美少女フィギュアプラモの文脈を引き継いだ第二弾か」という補助線を引いて納得することは簡単だ。しかし、そのような既知のシリーズ文脈や記号に回収される要素の奥底にこそ、このキットが仕掛けた最もアヴァンギャルドな企みが潜んでいる。

 注目すべきはプラグスーツを構成する白のパーツ。パッと見ではただの純白にしか見えないが、陰影豊かな光源のもとでは「うっすらとしたパープルかぶりの白」という絶妙なプラスチック色を採用している。前作のアリスであれば、キャラクターの記号に忠実な鮮やかなピンクの成形色がその役割を果たし、プラモとしての分かりやすい華やかさを担保していた。だが、この綾波レイの金型に流し込まれた白は、そうした単なる「記号としての色の再現」とは少々様相が異なる。紫〜青系の色をわずかに忍ばせることで黄ばみを打ち消すという技術的な意味合い超えて、そこには明確な意図としての「色彩表現」が込められていることに気づくだろう。分かりやすいのはスライド金型で成形された脚のパーツの奥まった穴。そこには明らかに紫色が認められる。

 この仕掛けは、三次元の立体物でありながら、二次元……つまり貞本義行氏によるイラストにおける固有の描画法を、物理的な影として現実世界に出現させるための計算されたアプローチにほかならない。通常の模型文脈において、成形色とは「塗装をしないユーザーのためのもの」あるいは「塗装をする前の単なる土台」として捉えられがちだ。しかし、このキットの白は塗装表現ではなかなかできない豊かな色彩を(白なのに!)実現している。ライトを傾け、影となる逆エッジにほんのりと絵画のような影が落ちるプロセスは、エクスプラスがあくまでもプラスチックという素材で表現できることを追求している証左に違いない。

 同月に発売されたエクスプラスのシレーヌに入っている純白のパーツと見比べると、それは顕著に現れる。派手なシリーズの看板や付属品(でっかいロンギヌスの槍)といった大味な記号で観客の目を惹きながら、「白成形色の顔料」という深いところに本質を忍び込ませる手口こそが、本作の真骨頂と言える。かつてないほど多様な綾波レイのプラモが市場に溢れかえる今だからこそ、各社のアプローチはさまざまになる。エクスプラスの得意分野を「カタチを追う固定ポーズのプラモデル」と捉えるのではなく、プラスチックという素材でできる表現に本気であることに気付かされる、注目の一作だ。

からぱたのプロフィール

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

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