
タミヤの1/35MMシリーズにM24チャーフィーが加わりました。実車の持つ歴史的な意義とかタミヤから新作として発売されることの重要性みたいなことはこれからおそらくたくさんの人が書くだろうことなので、私は組み味についてしっかりと記憶しておきたいなと思うわけです。
チャーフィー、高校生の頃に異常にハマっていたカードゲーム『タンクハンター』ではコンパクトな見た目と「軽戦車」という種別のわりにけっこう強いユニットだったのが印象的。タミヤのキットも軽戦車というわりにはパーツが多い。これは車体が箱組みだったり細かいディテールまでしっかりと分割していたりと、現代のタミヤ1/35MMシリーズではスタンダートと言える構成を取り入れているから。なので組み味はまあまあ重ため。

いちばん美味しいのは砲塔天面やフィギュアが入っているランナーですね。硬そうなところ、分厚そうなところ、薄いところ、布でできているシワシワのところ、細くてうねうねしたロープ、そして生き物(戦車兵)と、まるで質感のデパート。いろんな魚のブツを載せたまかない海鮮丼(最近ハマっているランチ)のような佇まいで、これをガバガバっとかきこむといろんな魚介のハーモニーが脳内でスパークするわけです。

みなさんタミヤのキットだからパーツがバチピタであたりまえでしょうくらいに思ってるかもしれませんけど、左右後ろで3分割された砲塔に対し、下に示した砲塔天面のパーツがビターンとハマるのはほとんど奇蹟のような瞬間です。神による何か。だってユーザーが3分割されたパーツを設計寸法どおりに組めることを保証し、そこに寸分の遊びもなくスコッとフタが入る。しかもそのフタの形状は前後に湾曲しており、中央部はキューポラとハッチという巨大な開口部がお互い近接しているため極細の地峡でつながっているだけなのです。「こんな芸当、金型精度、成型条件、事後変形の予測あるいは防除が高度に融合していなければこなせませんよね……」と静岡ホビーショーでタミヤの開発スタッフに質問したところ、「そうですねぇ。いろいろ頑張っています」とはぐらかされました。まさに神。

そのスタッフがもうひとつデモンストレーションしていたのが車体上面パーツと組み合わさる左右のフェンダーのパーツの着脱。接着キットなのにパーツの弾性を利用してパチっとハマり、自重でポロンと落ちないようになっているのです。なんなら車体下面と上面で挟み込まれる構造なので接着しなくても定位置に収まってくれると言ってもいいくらいの設計。これは実際に組んでみないとエレガントさが伝わらないと思うのでみんなも組んだほうがいいよ。

つまるところ、「キットの精度が高い」っていうのは褒め言葉として簡単なんですよね。ことタミヤについて言えばもう精度が高くないもんを探すほうが難しい。じゃあこのチャーフィーだって普通に精度が高いだけじゃん、ということになるんですが、あまりにも精度が高いと接着剤を使わずに仮組みしてバラして……と遊べてしまう。スナップフィットとまでは言いませんけど、「どこまで組んで塗装しようかな……キャタピラの上面はサイドスカート付けると筆が入らんな……」みたいなことが、組んでいる途中でも行ったり来たりしながらシミュレーションできてしまう。これは大変なことですよ。

上の写真バラバラですけどね、この記事のいちばん上の写真を撮影したあとでバラした状態なんです。全部組んでから見えるところだけ塗ればいいってのもホントだし、でも説明書に書いてある「見えなくなるところもそれなりにちゃんと塗りたい」というのも尊重したい。そういう心の葛藤に、はからずもタミヤの究極的な精度と位置決めの技が応えてくれる。世界最高のクオリティで作られた戦車模型の最新作は、もしかしたら塗装や組み立ての手順すら書き換えてしまうとんでもないパラダイムシフトなのかもしれません。みなさんも、ぜひ。