
1/72スケールのような小スケールの陸上兵器・車両キットは「二極化しているのか?」と思ってしまうくらいに2つの方向性のものばかりを見かける気がする。それは「構造が単純でお手軽」か、「目を見張るほどパーツ数が多い」かだ。サンダーモデルのトラクターは、完全に後者のディテール重視に振ったプラモデル。定期テストで問題用紙を裏返した瞬間に「これは厳しいかもしれない」と察する、あの独特の緊迫感に似た刺激を箱を開けた瞬間に味わえる。
とはいえ、実際の組み立てやすさは、作ってみなければ分からない。このキットはその好例だ。パーツは確かにかなり小さい。だが、組み心地はとても良い。位置決めが正確に決まり、パーツが組み合わさるにつれて密度と精密さが増していくため、モチベーションは切れることなく続く。エンジンを組み上げ、タイヤを取り付ける手前あたりで「なんとかなりそうだなこれ」と気分が落ち着いてくる。

ディテールの再現度が非常に高く、ステアリング機構をはじめ、凸凹した地面に合わせて前輪が上下に傾くメカニズムもしっかりと再現されている。

この構造を実感できたのは、速乾タイプの流し込み接着剤ではなく、通常の接着剤を多用したからだ。完全に固定されればもちろん動かなくなっちゃうんだけども、まだまだ接着が緩い段階で不意に他のパーツだったり指に当たると足回りの機構が実車っぽく動くので、純粋に感動した。ペダルやレバー類も精密にパーツ化されており、「このレバーは何の機能を司るのか」と思いを巡らせる楽しさもある。エンジンカウルもピタッとはまるので、最後まで楽しく作ることが出来た。

ここまで小さいと、どうしても細部の作業はとにかく緻密さを要求される。パーツを切り出す際は飛んでいかないように注意を払い、皿に出した接着剤を爪楊枝の先で点付けしていく接着作業もそれなりに気を使うので疲労感はなかなかのもの。金属製のエッチングパーツの加工もある。しかし、これだけの解像度がありながら、完成までの所要時間は約3時間と案外短く終わった。

もし、これがもっと大きなスケールであれば、これほど短時間では形になっていないはずだ。スケールの大小でニッパーの刃を入れる回数とか、パーツを探す手間とか、そういう細かな時間がコツコツと増えたり減ったりするんだろうなという気付きがあった。そういう意味だと、このサンダーモデルのトラクターは、確かに細かくて大変ではあるが、わずか3時間の凝縮された作業で、精密な手のひらサイズのトラクターが手に入る、非常に良いキットだ。