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良い木は手に入らない木/プラモを飾る「使い古した木材」とパテックフィリップ展

 模型を飾るとき、私はついつい「良い木」を選ぼうとしてしまう。
 木材にそれほど詳しいわけでもないから、ホームセンターへ行って価格を見比べ、「黒檀はやっぱり高いな」といった知ってる知識と価格を照らし合わせて選ぼうとする。それでも、高すぎれば財布と相談することになるし、安すぎても物足りない。そういう意味では、何が本当に「良い木」なのかが、分かっているようで分かっていない。調べれば素材の特性や使い道は出てくるけれど、選ぶ上での絶対の自信のようなものは持てず、いつも難しさを感じていた。

 最近、自分の中で「これは最高の出来映えだ」と思える完成品が仕上がった。様々なキットを組み合わせながら違和感もなく、かっこいい。友人に見せたところ「今年一番の出来のものが現れてしまった」と言われるほどの仕上がりだった。これをどう飾ろうかと思い、試しに価格の高い木の上に載せてみたのだが、どうにもピンとこない。

 しばらく考えた末に、これだと思い至ったのは、使い古した木だった。プラモデルにスプレーを塗装するとき、持ち手代わりに使っている木の端材がある。それには両面テープの剥がし跡や、幾重にも重なったさまざまな色のスプレーが付着していて、すごく雰囲気があった。試しに模型を載せてみると、使い古された素材感が、パリッと綺麗に仕上がったプラモデルと実に見事な対比を見せてくれた。
 このやたらと凄みのある木材の表情を見ていて、私は3年前に足を運んだパテックフィリップ展のことを思い出した。

 当時いちばん驚かされたのは展示に使われていた木の扱い。世界最高峰の高級時計の展示なのだから、素晴らしいものを使っているのだろうと想像していたのだが、そもそも考え方の次元が違っていた。彼らが使っていたのは「高級な木材」ではなかったのだ。
 それは長い年月を経て使い古されたような見た目で、あちこちに凹みや抉れ、欠けがあるものだった。家に帰ってから真似をしようと、木材をコンクリートブロックに叩きつけたりと色々なことを試してみたけれど、決して同じようにはならなかった。

 真ん中にパテックフィリップのロゴマークが据えられているのはさておき、良い木というのは、素材そのものの希少性とは別に、「同じものはそうそう手に入らない」という時間の経過も加味されるようだと気付かされたのだった。
 プラモデルをたくさん作ったからこそ出来上がった手元の端材は、パテックフィリップと肩を並べるには少し背伸びが過ぎるかもしれない。それでも、あの展示と同じように「おおよそ手に入らない木」だけが纏う特別な雰囲気と、確かな格好良さを備えている。

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クリスチのプロフィール

クリスチ

1987年生まれ。デザインやったり広報やったり、店長やったりして、今は普通のサラリーマン。革靴や時計など、細かく手の込んだモノが好き。部屋に模型がなんとなく飾ってある生活を日々楽しんでいます。
Re:11colorsというブログもやっています。

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