
無料読み放題期間で読みきれなかった『湾岸ミッドナイト』を怒涛の勢いで完走しようとしているために「チューンドカー」という言葉に鋭く反応してしまう今日このごろ、いかがお過ごしでしょうか。アオシマのGR86にHKSのフルチューン仕様が新たに加わりました。ボディにドカンと入る「Tune the Next」の文字と墨汁のしぶきのようなマーキングがかっこよろしいな〜と思い、なんならボディも黒いプラスチックだしこれはそのまま組んでデカール貼ってフィニッシュでもいいんじゃないかと思ったんです。しかし心のなかのアキオが言う。「キットのこと、もっとよく見たほうがいいんじゃないんですか」と。
キット最大の魅力はもちろん外観がガラリと変わるエアロパーツの数々。これはパッケージを見りゃ分かるわな。フロント/リアのスポイラー、カナード、サイドスカート、ダックテール、リアウイング、そしてオーバーフェンダー……。足回りに目を向ければ18インチ ADVAN RACING RG-4ホイールを奢り、もちろん速くなったマシンを制御する大径のローター、容量のでかいキャリパーも新規に起こしてレーシーなムードを高めているというワケよ。

マフラーはハイパワースペックL-IIでメッキ済みだ。それぞれランナータグ(パーツの枠から出っ張っている名札みたいなところ)にHKSと刻印されているから、まさにノーマルのGR86をカスタムするかのようにあれこれポン付けしてパワーアップしていくさま……つまりチューンを楽しめる。

ククク……チューニングでもっとも肝心なのはエンジンだろ。NAにしろターボにしろ、エンジンがマトモでなければ空力もへったくれもない。HKSのNAチューンを施したデモカーはエンジン自体をいじらず給排気効率を上げるためのパーツが装備されているらしく、また似たような外観でボルトオンターボのデモカーもあるようだ。なんにしろ、プラモデル的にはボンネットの中の様相が大きく変わっていなければチューンドカーとは言えないのである。


しかし説明書をじっくりと読んでいくと、エンジンに取り付けるべきノーマルのインマニすら不要パーツとして華麗にスルーし、いつのまにかボンネットを閉じて完成!ということになっているのだ(説明書ではしれっとノーマルのエンジンが組まれているコマも出てくるのだが、これはおそらく過去の説明書から図を使いまわしているため起きたお茶目事案だろう)。ユーザーにしれっとノーマルのGR86のエンジンを組ませておいてから「完成時にバリバリのエアロを纏ってれば中身までフルチューンに見えるっしょ、しょせんクルマは外観ですからネ」という不整合をやってもプラモデルとしてはなんら問題なく組み上がるのであろうが、そこであえて「エンジン周りのパーツを新規に起こさず、よってエンジンルームの中は見なかったことにする」という意思を持った判断がむしろカッコよくすら見えてくるのである。

なんならエアロなんかついてなくても、そこにどノーマルっぽいクルマがいても、ボンネットを開けなくても、アキオたちはすぐに見抜いてしまう。この車、佇まいがいいっていうか、立ち姿がビシッとしているんですよね。きっと速いと思いますよ……。凡人である私はエアロパーツが付いていると「おお、速そう強そう!」と思いがちだったが、しかしこのプラモデルはあえてエンジンルームのパーツを新規に起こさなかったことでチューンの余地をユーザーの脳の中に残してくれているような気がするのだ。俺が湾岸ミッドナイトの読み過ぎでいまちょっとおかしくなっているだけなのかもしれないけど……。