最新記事やプラモデル情報を毎日お届け!
follow on Xをフォロー!

【レビュー】神様みたいなプラモデル/コータリモデルスのメッサーシュミットBf109K-4

 「プラスチックパーツを組み上げるだけでこんなにすごい体験ができるのか!」という驚きと喜びがずっと続く、ものすごいプラモデルでした。コータリモデルスの1/32 メッサーシュミット Bf109 K-4は、わずか5枚のランナーで成立しています。現代の飛行機模型がこぞって体現しようとしている「パーツの細分化による説得力」とは一線を引いて、「どこまでパーツ数を減らし、情報量を増やすか」を突き詰めた設計が特徴。ゆえにとてもイージーに、でもぐっと引き締まった組み立て工程と完成像を楽しめる、素敵なプラモデル体験ができます。

大日本絵画
¥1,500 (2026/06/13 15:09時点 | Amazon調べ)

 その設計思想の源流は、ピーター・ジャクソンが立ち上げた伝説の模型メーカー、ウイングナットウイングス(2020年に惜しまれながら閉業)にあります。同社は第一次大戦機というニッチな題材をよりたくさんの人に楽しんでもらうため、「ひたすらパーツをこまかく分割すればリアルになる」という通念を一度解体し、少ないプラスチックパーツの組み合わせでどこまで飛行機の佇まいを表現できるか徹底的に挑戦し続けました。ウイングナットウイングスのスタッフが再集結して立ち上げられたコータリモデルスは、正しくその継承者としてここにあります。

 コータリモデルスがスピットファイアに続いて製品化した1/32のBf109K-4は、その思想を試すのにふさわしいモチーフです。この機体は、複雑怪奇な進化を遂げたメッサーシュミットBf109シリーズの終着点にあたり、速度と高度の限界に挑みながら巨大化したエンジンや武装を包み込む絶妙なアウトラインが魅力です。コータリモデルスは胴体を昔ながらの左右分割としながらも、現代的な設計/製造技術で迫力のあるシルエットを正確に再現(特に1/32というスケールは微妙なアウトラインの凹凸がはっきりと視認できるサイズになるため、K型というモチーフに好適です!)。大スケールモデルでありながらエンジンのパーツが入っていないのは「見えなくなるところはスッパリと省略し、素早く組んで塗装表現にこそ力を入れたい」というコンセプトを貫いているからこその選択です。

 キャノピーパーツは薄く均質で、高い透明度にため息が出ます。小さくなりがちな翼端灯のパーツはあえて帯金と一体で成形し、しかし内側のバルブを凹んだ彫刻とし、塗装で表現させる設計(完成するとリアルなんだこれが)。排気管は汚し塗装をした後で最後に機体に組み込むことを考え、接着剤を使わずに押し込む仕様とするなど、とにかく「実際に作るときの手順」を徹底的に考え抜いた作りになっていること、そして説明書がそれを完全にフォローするために緻密に仕立てられていることに終始感動します。

 少ないパーツ数で再現されていることの恩恵は、ただひたすら塗装を楽しみ、それを組み上げるというシンプルな楽しみに直結しています。今回はコクピットの内部をすべてAKインタラクティブのリアルカラーマーカーで塗りましたが、くっきりとした彫刻とわかりやすい説明書のおかげで「リアルさ」を存分に味わうことができました。「ほんとうにこれがプラスチックパーツだけでできているの?」と驚かれるような表現力は、まさしくウイングナットウイングスの遺伝子を受け継いでいることを物語ります。

AK-Interactive
¥17,090 (2026/06/17 01:08時点 | Amazon調べ)

 ブレーキパイプまで一体で彫刻された着陸脚、引き込み式か固定式かで選択可能な尾輪、それらの塗装手順を考えた分割などなど、細部に踏み込んでいっても「これ、どうやって塗装すんの」「これ、どうやって取り付けるの」と迷う箇所はいっさいありません。必ず「こうすれば塗れるよ」「こうすればしっかり固定されるよ」というヒントがパーツに仕込んであって、大スケールの飛行機模型でありながらビギナーからベテランまで、とにかくすべてのスキルレベルの人にオススメできる内容になっています。

 プラモデルというのは「大きいサイズのものは上級者向け」と思われがちです。しかしそれは「大きいモデル(=価格が高いモデル)はパーツをたくさん分割して細部を表現することがおもてなしである」というメーカーの思想が招いた大きな誤解だと僕は思っています。昔のプラモデルを手にすると「大きい=パーツ数が多い」というのが必ずしも正しくないことに気づくでしょう。

 むしろ、精密で複雑な金型をデジタルデータを用いて設計製造する現代的な技術があれば「昔のプラモデルのように少ないパーツ数でも驚くような立体表現ができる」というのは間違いないはずなのですが、しかしそれに挑むメーカーは決して多くありません。このことこそが大スケールモデルに対する「なんだか難しそう」という先入観を育む要因になっているのと同時に、コータリモデルスはそこに真正面から切り込んでいる稀有なメーカーと言っていいでしょう。

 極限までパーツ数を減らしながら、しかしほかのどんなメーカーよりもシャープで表情豊かな大スケールモデルを届ける。コータリモデルスのプラモデルは私にとって本当に理想的な模型の在り方を指し示してくれる神様のような存在です。完成した姿は『スケールアヴィエーション 2026年5月号』に作例として掲載されていますので、ぜひともその目で確かめてください。ディテールアップパーツや特別な工作を追加することなく、キットをストレートに組み上げて塗装しただけでこんなところにたどり着けるのか!という驚きがそこにはあるはずです。みなさんも、ぜひ。

大日本絵画
¥1,500 (2026/06/13 15:09時点 | Amazon調べ)
からぱたのプロフィール

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

関連記事