
1976年に発売され、長らくモデラーを楽しませてきたタミヤのM113。スケールモデルといえば第二次世界大戦のモチーフが多い中、この車両は少しあとのベトナム戦争で活躍しました。さてこのM113ですが、タミヤの発行しているカタログやウェブサイトなどで紹介を見ると、ズバッと車体の一部が切り取られた「カットモデル」の写真が掲載されています。これがずっと気になっていました。こんな写真で紹介されているキットは数えるほどしかありません。これにはきっと伝えたいことが隠れているから。

このキットでまず嬉しくなるのはパーツの色の多彩さ。パッケージを開封すると3色のランナーが入っています。「人」「車体」「インテリア」がそれぞれ異なる成形色なので、それぞれのボリュームも一目でわかりますし、組む際にも迷子になりにくい嬉しい仕様です。

また、シンプルな箱型の車体をしていますが、転輪やインテリアパーツもあるので、組み応えは十分。車内はエンジンパーツや隔壁なども再現されていますので、小さな部品を貼り付けていきながら情報量を上げていく至福の時間を味わうことができます。

組み上げたエンジンが張り付いた床をスルリと車体に嵌め込むと、一気に実在感が立ち上がります。「乗る自分を想像できる乗り物」になる、とでも言いましょうか。壁と椅子があると「狭さ」が想像できる感覚を覚えました。これまでもプラモデルでドライバーやパイロットを組んできましたが、それはあくまで大きさの目安。「この戦車は大きいなあ」「この車は小さいなあ」は感じましたが「狭そうだなぁ」という感覚は初めてです。これはやはりインテリアを再現しているキットだからこそ得られたものでしょう。

この後、車両を完成させていくのですが、天板などは接着するのではなく、はめ込んでいく方式をとっています。着脱はツメをひっかけるような仕組みで、かなり簡単に行うことができます。せっかく作ったインテリアを完成後も確認できる様にという配慮でしょう。表情豊かな人物たちを組み上げるとキットの完成。個性豊かな人物造形が想像力を刺激します。

組み終えた今だからこそ、カタログでカットモデルが掲載されていたのは、再現されたインテリアの充実を直接伝えるためだった。と断言出来ます。車内の空間とフィギュアを絡めれば、とても遊びごたえのあるキットですからね。ぼくは、「カタログのようにカットモデルにできるのか?」「おぬしに拙者が斬れるのか?」と言われれば「出来ません」と言うほかありませんが、斬らなくても実際に手に取ったユーザーは、設計の配慮によって存分に中を満喫することができるキットになっています。あなたもぜひこのキットを組んで、斬らずとも味わえるM113の「狭さ」を体感してください!