
カンブリア大爆発の様相を呈している美少女プラモ界に、アオシマが「ケモノのプラモデル」という概念を持ち込みました。ケモノ。それはかなりややこしい概念。耳や顔立ち、体表の毛や関節や手指に動物の要素を持つヒトっぽいなにか。これを動物の擬人化と捉えるか、獣化の途上にある人間と捉えるか、またその特徴の強弱においてヒト寄りを好むのか動物寄りを好むのか。概念こそ知ってはいるけど、じゃあケモノというのはいったいどう表象され、どう嗜むべきものなのか……を、まさに体感できるアトラクションとしてこのプラモデルは誕生したと言っていいでしょう。

ニホンオオカミやカオマニーという商品名、そして「自分好みのケモノをカスタマイズ」というコピーからもわかるとおり、アオシマのけもプラシリーズは特定のキャラクターを模型化しているというよりも、人間型のボディ(=シャーシ)と各種ケモノパーツの組み合わせでさまざまな形態を楽しめるよう設計されています。もちろん規格さえ合えば他社製のプラモデルにもケモノ概念を拡張できてしまうのですから大変です。

全体の構成は美少女プラモデルのフォーマット(たとえばアオシマは『マクロス』シリーズを題にとったVFGという美少女プラモシリーズを展開しています)に則ったものになっています。各所の関節可動ギミックもごくシンプルなものが組み込まれており、必要最低限のパーツ数で組み上がるよう研ぎ澄まされた構成。言ってしまえば、武装や装甲や、なんなら被服もないヒト型……いや、ヒトのようでヒトでない、ちょっとヒトっぽい何かがスルッと組み上がる素うどん的な存在です。

しかし身体の各所をよく見ると、モフッとした毛の彫刻が施されていたり、尻尾が生えていたり、手足に肉球が付いていたりして、さらに顔、腕、脚は複数種類が用意されていることに気が付きます。つまるところ、「1パターンにしか組めない素体に別売のカスタムパーツを盛る」という構成ではなく、ひとつのパッケージのなかであれやこれやと組み換えをしてユーザーが好みの形態を探る……という遊び方が提案されているのです。それからさきほど「人間型のボディ」とは言いましたが、スネに逆関節(動物で言うカカト)が入っているので人間とは違う動きをするのがまた面白いのだぜ……。


このプラモデルを知るうえで重要なのが、「ケモ度」の概念です。たとえば鼻と口の突き出し(マズル)が大きければ高ケモ、やや抑えめであれば中ケモ。腕や脚のフサフサした毛が多くて手足が大きく爪が突き出しているのが高ケモ、スラッとした脚に控えめな肉球付きの足が付けば中ケモ……といった具合に、「身体を構成する部位ごとにどれくらいケモノ要素を強く出したいか」を選んで組めるようになっています。

すべてのパーツを高ケモで組むと、だいぶケモ度の高い姿になります。めっちゃ狼だし、めっちゃ猫。ヒトっぽいポーズを取らせてもいいけど、四足獣らしい格好をさせても絵になります。反対に、すべてのパーツを中ケモで組むと、まあまあヒトっぽいルックになります。実際に組み換えをしてみると、なるほどケモノを愛する人たちはケモ度をここで嗅ぎ取っているのか〜という気付きが無数にあります。自分の中にはおぼろげにしか存在しなかった嗜好に、なんとなく輪郭が与えられていくような不思議体験がここにはあります。

考えてみれば、アオシマは自動車模型の世界でもカスタムカーカルチャーを旺盛に立体化し、実際にカスタムカーに乗る人たちはもちろん、「自動車模型の遊び方としての”カスタム”に興じる人たち」も育んできたメーカーです。そういう意味で、美少女プラモの豊穣な世界にケモノカスタムという概念を持ち込み、ケモノ好きに全力でアンサーすると同時に、ケモノに対する認知や自覚がなかった人たちに「なるほどそういう文化があるのか!」という気付きを与えるこのプラモデルシリーズは極めてアオシマ的じゃないか……という謎の納得が私のなかに発生しつつあります。このシリーズが見せてくれる広大な景色は、また次の機会にご紹介しましょう。それじゃ、また。