
「完成品フィギュアの名作がプラモデルとなって転生する」というコンセプトは、おそらくこれから大きな潮流になるでしょう。作り手が提示する完成形をそのまま受け取るという体験としてのスケールフィギュアを、自分で組み立てることでまったく別の角度から理解できる「唯一の体験」に置き換えるというのがどれほどおもしろいことなのか、このプラモデルを買っていっしょに体験しましょう。

Reincarnation……つまり、転生というのは言い得て妙です。かつて見たことのある「スケールフィギュアとして完成している状態」ではなく、それが硬質なプラスチックのパーツとしてバラバラになり、彩色によって表現されていたところがパーツごとの色に置き換えられた状態、つまりプラモデルの姿になっているのです。部位ごとにツヤの違う色はそれだけで美しく、身体の各部が各々存在感を持ってきれいに整列しているのもプラモデルならではの喜び。

もちろんこうした「無可動の完成品フィギュア的なプラモデル」というのは本シリーズが初めての存在ではありません。しかし、ここ十数年で急成長した美少女プラモの世界が広く認知され、加えて多くのメーカーが「有機的なフォルムをそのまま固定ポーズで立体化する」という技術的なトライアルに挑むなかで、グッスマが過去の名作フィギュアをシリーズとしてプラモデル化していくというのは大きな事件だと言えましょう。

2014年に発売された「レーシングミク 2013 ver.」というフィギュアを知っている人でも、当時買った人、買えなかった人、あとからその存在を知った人……と境遇はさまざまなはずです。もちろん、今回のプラモデル化でこのフィギュアを知った人もいることでしょう。名作フィギュアの実質的な再販として捉える人もいれば、かつてのガレージキットのように自分で仕上げることに意義を見出す人、そうした文脈を持たず純粋に「レーシングミクのプラモデル」として手に入れる人。こうした出会いを想像してみると、本製品がほんとうにさまざまな意味を持っていることが見えてきます。

造形は間違いないことが保証されていますが、そのうえで成形色のチョイス、パーツ分割は2025年だからこそ成し得るきわめて高度なバランスの上に成り立っています。PVCという柔らかい素材だからこそ成立していたムクのパーツが前後左右に分割され、完成品では塗装で処理されていた情報が物質化していることも面白いポイント。これを自分の手で切って組み立てるというのは、プラモデルだからこその体験です。

実際に組み始めてみると、四肢が空間をどう占め、色がどこに置かれているかが緻密に計算された完成品フィギュアを解体/再構築するという工程がプラモデルの中でもかなり特殊だということに気付かされます。脚のひねり、腕の伸びる向き、髪の毛の重なり、ひらめくネクタイやスカートの角度の意味を指先から味わい、眼の前でそれらが統合されていくのはスケールフィギュアの価値を改めて噛み締めることに直結します。

このキットは「名作フィギュアをもう一度手にする」というプラモデルであると同時に「名作フィギュアがどう成立していたかを理解するための装置」としても極めて優れたアトラクションです。完成品フィギュアの価格がじわじわと高騰し、プラモデルというカルチャーがその版図を大きく広げつつある2020年代。そこに歴史的価値のある造形が「再び作られる権利」とともに我々の前に再臨する。「Reincarnation」は、昔買えたものの代用品としてではなく、新たなカタチでの出会いとしてこれから多くの驚きをもたらしてくれるはずです。みなさんも、ぜひそのワンダーを味わってください。