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【レビュー】マルジェラが裏返したくなるようなキレイさはプラモにもあった/タミヤの1:48 ドイツⅢ号突撃砲G型

 フランス軍のパンツにM47というモデルがある。昔から値段が高くて、今調べたら、存在を知った当時よりもはるかに高い。といっても、自分はそこまで古着に詳しいわけではなく、相場を語れるほどでもない。ただ、同じフランス軍のF1パンツなどの他の軍パンと比べても明らかに高く、学生の頃に古着屋で見かけるたびに「なんでこれだけこんなに高いんだ」と思っていた。理由を探るほどの熱意はなく、当時はただ服が好きなだけだったので懐事情を基準に勝手に高いと感じていただけ。それでもM47は他の軍パンに比べると少し距離のある存在だった。

 進学してから、服好きの友人に「あれはマルタン・マルジェラがランウェイで裏返しに履かせたから高いんだ」と聞かされた。半信半疑のまま話を聞いていると、「縫製技術を見せるためで」といった説明が続く。それっぽく逸話を話す姿に最初はなんとも言えない苦笑いをしたものだけど、少し考えるとジーンズを裏返してセルビッジがどうこう、リベットがどうこうと言っていた私は友人と大差がないのであった。帰宅して家にあったフランス軍のジャケットを裏返してみると、確かに縫製の始末が他よりきれいだったのをよく覚えている。

 タミヤの1/48 ドイツⅢ号突撃砲G型 (初期型)を作っていて、ふと思い出したのがその「裏側」の話だ。パネルやキューポラが気持ちいいほど正確に車体にはまる。接着のたびに模型を裏返して作業することになるのだけども、歪みが出ないように、上下を取り違えないようにと見えないところに細かな工夫が詰め込まれているのが分かる。完成すれば隠れてしまう部分ではあるが、それでも「これはかなりきれいだな」と感じて、しばらく手を止めて眺めてしまった。

 ズボンは裏返しても履くこと自体は成立するが、プラモデルの戦車は布のように裏返すことはできず、ひっくり返った状態になるのがせいぜいといったところ。そんな風に性質はまったく違うが、どちらにも共通しているのは、完成後には見えなくなる部分もしっかりと作られているということ。これまであまり意識してこなかった視点だが、こうした目に触れない部分の積み重ねこそが、「世界のタミヤ」だと感じた。裏側がすごいんだ!という気づきは十数年前のことを急に思い出させてくれたし、マルジェラがM47の裏側に良さを見出したような発見をプラモデルを通じてできたことがとても楽しい。

クリスチのプロフィール

クリスチ

1987年生まれ。デザインやったり広報やったり、店長やったりして、今は普通のサラリーマン。革靴や時計など、細かく手の込んだモノが好き。部屋に模型がなんとなく飾ってある生活を日々楽しんでいます。
Re:11colorsというブログもやっています。

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