
青島の楽プラシリーズにフォルクスワーゲン ビートルが加わりました。世界中の誰もが知っている大衆車の傑作を題材にしながら、その造形をめちゃくちゃ注意深く捉えたプラモデルになっています。塗装も接着剤も不要という表示に加え、パッケージには大きな初心者マーク。たしかに組むのは簡単ですが、その軽快な体裁の奥で、このプラモデルはビートルの特徴を細部まで掬い取ろうとする誠実さに満ちています。すごいよ!

ボディは1953〜57年に生産されたリアウインドウが楕円形の「オーバル・ウィンドー」タイプを再現。1/32スケールのビートルといえば、旧LS(現マイクロエース)の「スプリット・ウィンドウ」や、ドイツレベルやエアフィックスの「ラージスクウェア・ウィンドウ」が比較的手に入りやすいアイテム。青島がその中間に位置する「オーバル」を選んだのは、既存のプラモデルを踏まえつつ、しっかりとピースを埋めていこうという意思の表れにも思えます。

楽プラのシールは「手軽さ」と同時に、キラッとした質感を手に入れるのに本当に適しています。1/32では塗装でもパーツ分割でもなかなか骨の折れるメッキモールが、シールを貼ることでメッキにも劣らない輝きになります。ボンネットにはヴォルフスブルク市の紋章が描かれたメダリオンまで再現。肉眼でかろうじて判別できるほどのサイズに、1950年代前半のビートルが持つ特徴がギュッと詰め込まれています。
三角窓つきウィンドウも、窓とドアの位置関係をよく見ると窓がわずかに小さい年式であることを強調しているように見えます。シルバーとブラックを塗り分けるのが難しい細いウインドートリムも、シールならあっという間に完成。

メッキパーツはヘッドライトやバンパー、ホイールキャップを再現するために用意されています。さらに一見用途がわかりにくい小さなパーツをボンネットの裏から押し込めば、ホーングリルとボンネットハンドルが表に顔を出すという設計で思わずニヤけてしまいます。
ホイールはボディと同色のリムにメッキキャップを被せ、さらに周囲に細いシールをぐるりと貼る設計で、実車のホイールの特徴を楽プラらしい解釈でうまく表現。今後のカラーバリエーション展開ではシールを入れ替えるだけで足元の表情を変えられる遊びも楽しめそうです。

このキットには、尾灯の出っ張りの上に貼る“ハート・テール”を再現するシールまで用意されています。視認性の悪さゆえ短命に終わったこのブレーキランプは1952〜55年の前期型にだけ存在した特徴で、この小さなシールによってビートルの生産史のごく限られた時期が鮮やかに切り取られています。楽プラだからと言って手加減せず、特定の期間に製造されたビートルのなかでもオリジナル度の極めて高い個体を取材し、実直にその特徴を模型に反映させていることが窺えます。

従来のプラモデルであれば、メッキの扱いや塗装の巧みなベテランモデラーが到達できる領域だった再現性を、この楽プラはシールという誰にも開かれたフォーマットで実現しています。だからこそ、ここにはマニアを唸らせる細部の忠実さと、初めてプラモデルを触る人を安心させる扱いやすさが共存しているのです。ビートルのように普遍的で親しまれてきた車の姿を、時代性を含めて机の上にそっと置ける歓び。それを誰もが共有できるのが、この楽プラVWビートルの持つ最大の魅力です。みなさんも、ぜひ作って下さい。