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凝縮された造形で味わう黄金の主役!/ボークスIMS 1:144 ザ・ナイト・オブ・ゴールド =デルタ・ベルン 3007=

 ボークス製IMSシリーズにおける1/144という手頃なサイズでついにK.O.Gが発売されることになりました。1/144スケールのプラモデルでありながら、IMS版 K.O.G. =デルタ・ベルン 3007=は、その箱を開けた瞬間から、ひとつの完成された表現として驚きを与えてくれます。赤金とカッパーの2カラーで成型されたランナー群は単なるメタリックカラーではなく、見る角度や光の当たり方によって印象が大きく変わります。

 「K.O.G.は塗装してこそナンボでしょ」という意見もあるでしょうけど、仮組みの段階でも非常に完成度が高く、素直に気持ちのよい仕上がり。とくに初めてK.O.G.に触れる人にとっては、あらかじめプラスチックに色が付いていることが大きな価値になります。金色のロボットは数多くありますが、ここまで成型色で質感に迫ったキットは他に類を見ません。これはIMSシリーズで繰り返されてきた成型色の検討、ボーンペイントとの連携によるK.O.G.専用の塗料開発など、長年にわたる追求の成果と言えるのではないでしょうか。

 全体として、IMSの1/144シリーズは1/100での開発経験を反映した設計が見どころで、造形や組み立てやすさの両面で確実に進化を感じさせてくれます。とくにK.O.G.は同シリーズのL.E.D.ミラージュからのフィードバックも反映されていると考えられ、本キットは1/100から数えて単なる「2周目」の存在ではなく、「2.5周目」とも言える造形と組み心地を備えていると感じました。

 1/100スケールのK.O.G.はこれまでに何度か組んだことがありますが、圧倒的なランナー数と複雑なパーツ分割が印象的でした。それに比べて今回の1/144版は、パーツ構成がかなり整理されており、組み立てのハードルが下がった印象を受けます。構造的にも無理がなく、組みやすさが際立っています。同時にランナー上のディテールはやや強調されている印象がありますが、これは1/144というサイズ(完成時全高184mm)にあわせて調整された結果と思われます。特に頭頂部の彫刻表現は明確で、見ていて心地よい仕上がり!

 脚部は、展開状態とハイヒール状態の2種類から選択式になっており、安定した接地性の確保と、今後展開されるであろうバリエーション展開も視野に入れた設計と考えられます。これは内部フレームを中心にパーツを一部共有しているL.E.D.ミラージュの構成と同様ですが、当然ながら胸部や肩、頭部のパーツ構成は完全に異なるため、想像よりもずっと新規造形部分の多いキットになっていました。

 デカールは肩の赤いラインや額のフレームなど最低限のポイントに留まっていますが、いちばん気になったのはスネ部分の赤いライン。こちらは各自でマスキング塗装を行う必要がありますが、太もも側のデザインはパーツ分割のラインと一致しているため、塗装のガイドとしては使いやすい形状です。

 組み立てを進めていくと、ランナー状態で感じられた情報の密度そのものが「完成の説得力」につながっていたことに気づかされます。成型色を活かした仮組み状態であっても、完成へと着実に近づいていると思わせる存在感。それはボークスが積み重ねてきたIMSシリーズの技術と、「1/144スケールにおけるK.O.G.とはどんな存在であるべきか?」という問いに対する真摯な探究心によるものでしょう。塗装せずとも成立しそうなこの美しさは、あくまで完成への入り口。1/144スケールであるにもかかわらず、仮組みの段階でも強い満足感を与えてくれるMH造形にK.O.G.というアイコンが加わったことそのものが、ひとつの事件だと思うのです。

けんたろうのプロフィール

けんたろう

各模型誌で笑顔を振りまくフォトジェニックライター。どんな模型もするする食べちゃうやんちゃなお兄さんで、工具&マテリアルにも詳しい。コメダ珈琲が大好き。

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