

『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』を劇場で見る直前にまずガンプラが買えたことがすごい。鳴り物入りの新番組の最初のアイテムをとにかく欲しい人全員に届けるぞという気迫を模型店や劇場の棚に感じた。どんだけ生産したんだろう。まあとにかく、「この山下いくと果汁を濃縮還元したようなデザインをどうやってパーツに分割して、動かせるようにするんだろう」というワクワクが、オレの中でストップ高だったのである。しかし手首に見えるT字の青いダボ(プラモデルを組ませるための”都合”)が最初からデザインになっているのはどうなんだ。ズルいぞ。
パッケージを開けると、ごく薄く青みがかった透けのない白に度肝を抜かれる。パーツを見ても、どれが腕でどれが脚でどれがバックパックなのかもうぜんぜんわからない。いかなるモビルスーツも見知った手順で組めるように手慣れた仕草で設計してきたバンダイスピリッツが突如として未知のデザインに挑むとき、我々もまたこれまでにない新しい組み味と邂逅し、無垢で新鮮なプラモデル体験をするのだ。

メカ色のパーツもまた、ライフルと斧が一撃で視認できる以外はまったくの大冒険である。なんせ肘や膝の関節は外装同士が接した片持ち構造になっていて、いわゆる「関節ブロック」に頼ることのないデザインだ。モビルスーツの文法を根本から変えるチャンスに、いま全人類が立ち会っている!という感動。みんなコレ組んで「うひょー」って同時にビビってるわけでしょ。映像もさることながら、プラモデルもまた、立派なメディアとして輝いている瞬間ですよ。

おもに色設定をトレースするためにパーツはかなり細分化されていて、ランナー(パーツのくっついた枠)はじつに7枚。組み立て自体は指でイケるけど、付属のステッカーをビシッと貼ろうとすると幅1mmくらいのものも多数あるので先の尖ったピンセットが必要だ。ついでに拡大鏡もあったほうがいい。ビシッとシールを貼って全体を組み付けようとすると、だいぶプラモデルに慣れている人でも2時間半くらいは必要になる。

透け感ほぼゼロのベッタリとした赤は、足首と腹に配置されてガンダム的な安心感を与えてくれる。GQuuuuuuXにおいてはツノ(頭部に巻き付くように動くデザインで、格納状態と展開状態の2つを組んでどちらの頭部を取り付けるか選択可能)も赤くすることで見るものをギョッとさせる。明度高め、やや黄色に振ったブルーと合わせてジークアクスの色彩設計的なポイントだ。

肘や膝の片持ち関節をいかにプラモデルとして落とし込むのかについては想定の範囲内だったが、兎にも角にも腿から足にかけての構造とそれを再現するためのパーツ分割は秀逸だ。推進剤が入ったタンクのようなものがスネに格納され、その先端に巨大なノズルが露出し、これがジンバルで動くようになっている。接地するための「足」はあくまでもノズルを保護するバンパーのような役割になっていて、デザイン、組み味、プレイバリュー(ポーズを取らせたときの推力線の見え方と、シンプルで広範な可動性能)のどこを取っても素晴らしい。

成形色はどれも良いのだが、それぞれのリッチ感をどうしてもブーストして「自分だけのガンプラ」にしたいくらい本編に感動してしまったので、ランナーのまま全パーツを塗りながら組むことにした。色を変えたいというよりも、それぞれの質感をよりリッチにすることで面構成を際立たせるのが目的だ。乾燥しているシーズンなので、エアコンをガンガンに効かせた部屋ならばラッカー塗料は10分程度で組める状態になる。
白と青のパーツはGXクリアシルバーでコート。この塗料は下地の色に影響を与えず、表面にキラキラしたシルバーの粒子が乗って陰影がより強く(つまり凹凸がよりシャープに)見えるようになる。メカ色のダークグレーにはGXグラファイトブラックを乗せる。プラスチックの色とほとんど変わらないが、微細なフレークで黒鉛のような金属感が追加される。ニッパーで切断した跡のタッチアップに使うのも有効だ。

赤いパーツは要所に配置されているので目を引く部分。GXスーパークリアー3をたっぷりと厚吹きしてヌルヌルのグロス感を出している。ここだけは少々乾燥時間をとりたかったので最初に塗装しておき、赤いパーツ以外の組み立てを進めて時間効率を稼いだ。残りはほとんど気休めで、黄色のパーツをNAZCAのマンダリンイエローで(これは塗ってもプラスチックの色とほとんど変わらず、正直そのままでもOKだった)、足とバックパックのノズル部分を焼鉄色で塗った。いま自分のなかで焼鉄色がブームなので……。

組み上げてみれば、プラスチックパーツのままよりも数段リッチな雰囲気に仕上がった。なにより各パーツの表面反射が増えているので硬質なストロボのライトを当てると陰影が強調され、複雑な面構成がよりハッキリと認識できる。さらにここから細部の色設定を拾っていくにしても、全体に塗料が一層乗っていることで追加塗装もしやすいという利点がある。

塗って組んだことが嬉しくなって思わず塗装レシピを書いてしまったが、正直言ってこれはあくまで私の体験であり、それよりも何よりもジークアクスのプラモデルが(パーツの多さに怯むかもしれないけど)組んでみると激しく面白いということを伝えたい。これまで見たことのないデザインラインを持った正体不明のモビルスーツが、理路整然と組み上がってさまざまにポーズを取り、これから起こるであろう冒険とそれを切り取ったシーンを予見させてくれる。いつかどこかで買えるのがプラモデルのいいところだけど、日本中のガンダムファンが「これからどうなるんだろう!」って思いながらいっしょにこのプラモデルを組んでいることを、オレはいま無性に嬉しく思う。