

ハセガワの「ラフテレーンクレーン」は部品分割を増やすことで得られる再現性に加えて、完成に至るまでの塗装や組み立てやすさへの配慮も感じられる意欲作。じゃあ優しくて簡単に組めるのか?というと、そういう組み味でもなくて……なかなかにスパルタンな味わいのプラモデルだったんだな。

箱状のユニットの多くは各面のディティールを再現するためことごとく板状に分割されている。板で箱を組み上げるにあたって同社のマクロスシリーズのリガードやクアドラン・ローでおなじみの桁状の部品が入ることで板同士のチリがピタリと合うようになっている。

部品の合いがよくてディティールの再現性もよければいくらでも分割してくれてよいかといえばそれも少々考えもので、運転席前方の三色回転灯は再現性へのこだわりが一周回ってなかなかハードな構成。赤/黄/緑が縦に重なる回転灯なのだけれど、マスキング無しで塗装してから組めるよう一色ごとに分割され、更に頭頂部の不透明部品も別パーツ。しかも個々の部品はピンセット必須の極小サイズ。自分は経験上なくしてしまう自信があったので、せっかくの分割ではあるのだけれど先に接着してあとから塗り分けることにした。

キャビンは透明部品の塗装手順を考えると一番手数の多い面倒な箇所だと思っていたのだけれど、むしろこのキットで一番組みやすいところ。各面窓ガラスの縁を塗りわけるためのマスキングシートが用意されていて、ボディへの取り付けも操作盤で挟み込むなど固定方法が練り込まれていて「緩めのスナップフィット」くらいの塩梅でサクサク組める。

打って変わって伸縮するクレーンのブームはこのキットの最大の見せ場にして鬼門。L字断面の部品を組み合わせて角パイプを組むのだけど説明書に「外側から流し込み接着剤を使うと便利です」と書かれている。「内側から流し込むほうがキレイでは?」ってやってみたらどうも内側から流し込んでちょっとしたはみ出しなどで内壁が荒れるといとも簡単に滑りが悪く(内側なので修正も困難)なるようでかなりデリケート。

クリアランスが緻密なので塗装厳禁という指示も書かれているのだけれど、未塗装でもかなり固く設計されているようで、結局具合を見ながらいい塩梅まで各ブームの4面にヤスリをあてる作業を繰り返した。もう一台作ろうと考えた時に尻込みしてしまう大変さだったので、今後さらにクレーンのラインナップが増えていくのなら改良して欲しいポイントだ。

説明書では畳んだ状態で作り進め、最後にクレーンを伸ばして糸を掛け、フックを吊るして完成としている。クレーンをたたむときにはシャーシからクレーン基部を外し、縮ませたら糸をリールで任意の位置まで巻き取り、再びシャーシに取り付けたらサイドミラーに干渉しないようにクレーンを起こしたまま正面に向けてから倒す手順を踏む必要がある……のだけれど、ここが結構ユーザーの理解力に委ねられていて特に説明がない(!)。
これは変形ロボの変形方法の説明がないみたいなハナシだ。ロボットのプラモだって関節一箇所ごとに「ココが曲がります」なんて説明はないし、クレーンブームなんかは伸びた図を見れば伸ばしてくださいと文字で書かれてなくてもみんな伸ばすだろう。それでも、もう少し説明があってもいいかなと思う。

そんなハードな組み味だけれども出来上がってみれば、プラモデルではおなじみの1/35スケールに相応しい高解像度の仕上がり。クレーン使用時に脚となるアウトリガの構造もまじまじと見れるし、各部についた艤装品も一体どんな風に機能する装置なのか興味が湧く。
「クレーンの白いとこの腹に斜めについてる青い装置はなんだろう?」とつぶやいたら「それ先週使ったよ」と実際にクレーンを扱う知人から使用状態の写真を見せてもらえた。そう、このクレーン車は現役バリバリの働く車なのだ。今、実際に仕事に使って働いている人たちが身近にいるかもしれないという面白みがある。なんならモチーフである実車を製造販売しているタダノのホームページを覗けば実車のカタログだって見られてしまう。カタログや実物とプラモと照らして「フムフムなるほどw」という楽しみ方もできる。組んだ感想として難しい部類のプラモデルなのだけれど、モチーフが現役のうちに挑戦してみる価値があるよ。