最新記事やプラモデル情報を毎日お届け!
follow on Xをフォロー!

【レビュー】実はこれこそ「大本命のバリエーション」なのだ!/ハセガワ1:72クァドラン・ロー(TV版)

 TV版よりも劇場版のほうが何かと伝説的にフィーチャーされがちな初代マクロス。例に漏れず劇場版デザインから始まったハセガワのクァドラン・ローのバリエーションもここにきて「TV版/ミリア機」のリリース。TV版を視聴したことがなくとも「当時からある旧キットの箱絵のあの塗り分け」という意味でなじみがあるという人は少なくないだろう(自分もかなり後になってからレンタルで観るまで劇場版しか知らなかった)。そういう意味ではアニメよりプラモデルを軸にマクロスに接してきた人たちにとってはTV版カラーリングこそクァドラン・ローの大本命といえるかもしれない。

 劇場版との造形的な差異と、同一形状でも色違いの箇所の再現のために新規ランナーを追加したキット。実は劇場版よりずっと多いTV版の塗り分け設定。スネ周りの分割は裾の形状のエッジが丸まっているという造形上の差異以上に「ここに色の境界があるのがTV版なんだぜ」というこのキットで加えられた新規部品のカオといえる。

 もちろん、グラマラスな曲面で構成されたフォルムの拾い方のうまさは健在。そのフォルムが適切な分割とパーツ数で色が揃った姿でバチバチと立ち上がっていくのが心地いい。分割をアクロバティックにしたり造形をアレンジして無理に合わせ目を減らそうというようなことはなく、フォルム再現に適切な分割をした結果発生する合わせ目についてはユーザーに任せる実直さを感じる。このキットの合わせ目を消す作業はさして苦になるような箇所はなく、組みあがりのチリの閉じ方も良好なのでとても良い判断だと思う。

 バックパックの組み立ては前後分割された大きなガワを閉じる。必要最低限の桁を入れてすぐに閉じる。その必要最低限の桁が揃わないとしっかりと閉じないので正しく組まない限りはばらしてやり直せるし、あらかじめ挟み込んでおかないと外観上後から取り付けられない部品もないので、塗装のことを考えても扱いやすい。

 ずんぐりとして四肢が長くボリューミーなデザインも合って脚一本、腕一本、胴体、バックパックといった構成する要素のことごとくがボリューミー。写真に写っている接着剤やニッパーと比較してもらえばそのサイズ感が伝わると思う。完成時の顔の高さでいえば1/100クラスのガンプラと変わらないのに、もっとずっと大きいロボットを作っているように感じられる。


 組み立てのハイライトは背中へのバックパック取り付け。取り付けに一切の差し込みピンやタブスロットが存在せず、本体背中に4つ並んだエッジの丸まった四角い突起はあくまでも位置決めとして機能し、コックピットハッチ開閉ヒンジに上端をひっかけてコリっと面同士が噛みあうトコロまでおろすと、手品のように固定される。ここに取り付ける瞬間の手に伝わってくる感触がゼントラーディ系の機体のワンダーを感じさせてくれる(?)キットを「組んだ人だけにわかる」サプライズだ。一度組んだら外れないなんてこともなく容易に付け外しできて塗装する際にも便利。


 パイロットフィギュアも新規に起こされた、前髪が片側によってる「TV版のミリア」になっている。細部まで全く同じものをモチーフにしているという点で旧1/144キットと比較するのも面白そう。

 組みあがって立たせてみると高揚感がスゴイ。キャラクターとしての好みを横にしていえば劇場版ミリア機/劇場版一般機と比べても組みっぱなしの充実度が頭一つ飛び出していると思う。塗り分けが増えたことで曲面上の稜線が可視化されたのに加え、クリヤーパーツが視線の集まるフェイスに眼としてわかりやすく置かれ、劇場版では無色透明だった頭頂部と胸部もクリヤーオレンジになって差し色が入り、色と質感で形状の変化以上に情報量が増えている。

 「ハセガワのクァドラン・ローは劇場版をもう組んだことがあるからもういいよ」と思っている人もだまされたと思って組んで欲しい(自分もリリースの報を聞いたときそんな感想だった)。劇場版が伝説化していく中で取りこぼしていた感のあるTV版デザインの良さ、本編を観ることなくプラモの箱絵を眺めてはカッコイイ!と思い焦がれていた想いを再確認できる。

HIROFUMIXのプロフィール

HIROFUMIX

1983年生まれ。プラモデルの企画開発/設計他周辺諸々を生業にしています。

関連記事