

彫刻作品としてすげーんだよという話で褒めまくった海洋堂のARTPLA イングラム1号機 リアクティブアーマーなんすけどね。「布スゴイね」だけじゃ終わらないんですよ。実際布を布らしく見せるためにめっちゃオーバーな演出が入っていることは間違いないんですけど、説明書の工程を順番に組んでいくと最初に現れる脚部なんてもう、大して面白くないんです。「はいはい、イングラムってこういうカタチしてますよね。それを馬鹿正直に分割するとこうなりますよね」みたいな感じで、こんな感じで全体が進むなら組んでいく工程そのものにアドレナリンがドバドバ出るようなピークタイムは来ないのかも……ってちょっと思ってたんですよ。

これがね、胴体のパートに入っていくと大変なんです。ガンプラの始祖である「300円ガンダム」もかくやというたった2パーツの芯でまずボッコォオオンとでっかいカタマリが出現して、そこにリアクティブアーマーを着せていくんですが、左右非対称でシワシワのモコモコをペタペタ貼っていく流れが素晴らしい。接着線が気になるところなんてほとんどなくて、ただひたすら手が動く。前に進む。これはPLAMAXのイングラム胸像でも覚えた感覚です。しかしさ、「動かないイングラムのプラモデル」が複数の会社から、全然違うテイストで続けざまに発売されるのって、おもしろいねぇ。

硬い襟のパーツの内側にあるシーリングが首の動きに追従してグニャーっとねじれ、さらに外側にもリアクティブアーマーの襟がもう一層。これはもう生でジュルリと啜る直前の牡蠣みたいなルックですね。ここにアイラモルトを垂らしてウヒヒ……とやりたいじゃないですか。ちなみにペリスコープ(コクピットから外を覗くガラス)は他のパーツと同じパールグレイのものと実際に透けて見える透明パーツが入ってるんですけど、ここはリアリティを求めるなら透明のものを、彫刻として愛でたいなら透けないソリッドな色のものを選べよ!というゼータクな仕様なんですよね。つまりなにが言いたいかというと……。

このプラモデル、「塗装工程を考えてパートごとにちまちま組む」というのをやると全体のカタチがいつまでも見えないし、工程のラストに向かってグイグイと加速していくような組み味がどうしても感じられないと思うんです。大丈夫。脚は脚、腕は腕、頭と胴体と股間ブロックはこれくらいまで組んで貼らずにカチャカチャ組み合わせるだけでもちゃんと大地に立ってくれます。ここまで行ってから「さーて塗るか?それともこのまま貼っちゃうか?」と悩むくらいのスピード感で対峙したほうが、この”彫刻”を楽しめると確信しております。

いまや侘び寂びの象徴のように語られる仏像や大理石の彫像ですら、作られた当時は極彩色に塗られていたものがほとんどだとされています。もちろんそのように塗り、組み上げ、いわゆるロボットモデルライクな仕上がりを求めることもこのプラモデルでは可能です。
しかし、私はこの陰影あふれるイングラムの佇まいにはもっと違う色があるのではないかと思うのです。それはもしかしたらこのプラスチック剥き出しの無彩色かもしれないし、あるいはゴッホやモネのように「特定の色のトーンだけで状況を表現する」という方法論かもしれない。そんな発想も受け止めてくれる緻密な彫刻を、ハイスピードで手に入れられる。こういうプラモデルの遊び方を多くの人が示してくれると、プラモデル遊びの版図はいまよりもずっと大きく広がるはずなのです。