

おお、いかにもSF戦闘機。ゲームかアニメかプラモオリジナル企画か、まあ中国の模型シーンではこういう製品がわりかし多いよね……と片付けてしまうところだった。この戦闘機は2021年、第13回珠海航空ショーにて中国航空工業集団が発表した「南天門計画」というプレゼンテーションにて登場した「玄女III型(愛称はKALAVINKA)」だ。無人宇宙戦闘機であり、ハチャメチャ強力な粒子線を射出して目標を破壊することになっている。

「中国はマジでこんなもんを実現しようとしているのか!?」と思わずビビるが、これはあくまでSF的な世界観でビジュアルと文芸を展開し、広く国防に興味を持ってもらおうというエンターテイメントコンテンツだ。HOBBY MIOブランドで発売されたプラモデルはきわめてキャラクターモデル然とした内容で、色分け済みのプラスチックパーツを接着剤無しでビシバシと嵌め込んでいけば完成する仕様。スケールは1/100だが、わりと大柄な機体なので全長25cm程度とそこそこボリュームがある。

SFコンテンツにそれなりの実在感をもたせるならもう少しパネルラインがシャープであってほしいし、素材のほとんどがABSなのでハメ合わせは食玩ライクなもったりとした印象。完成見本の写真は塗り分けのセンスも良く、バリエーションである「隊長機バージョン」「迷彩バージョン」も非常にイカす見た目をしているので、いわゆるフツウの飛行機模型として接着剤を使ったりシャープエッジが楽しめたりする設計としても良かったんじゃないかな〜と思いながらの組み立てとなった。

初回限定版と銘打って赤い外装部がクリアー素材になったランナーも同梱されているが、透過率が著しく低く表面もツヤ消しなのでゴージャスさに欠ける。とはいえ、中国からやってきた大資本の考えるオリジナルの宇宙戦闘機のプラモデルが日本の模型店でヒョイヒョイ買える時代になる……なんてのは10年前だとほとんど想像もできないことだった。現在の中国におけるプラモデル技術と文化の熟成具合とか、彼らの考える未来(なんせ彼の国はいまSF小説の世界的中心地として注目を集めている)を想像するのにはもってこいの製品である。

濃淡2色の赤や差し色となるオレンジ、グレーなどはシールで再現でき、コーションマーク(細かい注意書き)も一緒に印刷されているので、組んで貼るだけでだいぶ精密な雰囲気の完成品が手に入る。自分で緻密に塗装したい人に向けて水転写デカールもセットされているが、凛々しく仕上げたければ、ABS製プラモデル特有の「なーんかいくら力を入れてもパーツ同士のスキマがちょいちょい見えるんだよなぁ」というのをどうにかすべく、全体のダボやピンをカットして接着し、あるべきところにパーツを収めてから塗装するだろう……というのが私の本音だ。

前進翼でありながら複葉を思わせるアグレッシブな配置は見る角度によってかなり表情を変えるため、手に取ってグルグルと眺め回すのが楽しい。着陸脚もないし、異常にパーツが細分化された機体下面のビームライフル的武装(いかにも日本のロボットアニメを見て育った人が描きそうなデザイン……)を介してのみディスプレイ可能なスタンドが付属するなど、「スケールモデル的な実在感には少々欠けるがキャラクターモデルとしての完成度はそれなりに高いし、何よりモチーフの出自が面白すぎる」というその一点で財布の防衛ラインを突破するタイプのプラモデル。「将来にわたっていつでも買える」という性格の商品ではないだろうから、いまこの瞬間にビビッと来たならば、ぜひとも手に入れておきたい一品だ。