

小さなハコを開けると白くてかわいらしいパーツが飛び出してくる。まるでドルチェみたいに。エレールはフランスにルーツを持ち、いまはドイツ企業の資本で活動する模型メーカー。一新されたパッケージはパッと目を引く黄色に統一されていて、いかにも舶来の模型を手に入れたという感じがする。日本語はどこにも書かれていないけど、イラストを見れば組み立てられてしまうのがプラモデルのユニバーサルな魅力だ。

エレール製1/43スケールのオースチン・ミニ。ボディをつまみ出すと、エンジンフード前方からニョキッと枝が出ていて、さながら串カツのような見た目。ウインカーやドアハンドルはボディーと一体になっていて、フロントグリルから下とリアのトランクカバーから下が別パーツとなっている。幅わずか34mm、長さ71mm、ミニという名前が体現する、小さな車の小さな模型だ。

タイヤはプラスチック製でホイールは外側だけ別パーツ。リアルな質感は望むべくもないが、「気軽に貼って気軽に塗る遊びを小さくまとめたプラモデルなんだから、そのようにすればいいんだ」となんだか気が楽になった。ここがもしリアルなトレッドの入っている軟質樹脂のタイヤだったら、そこだけが浮いてしまうのを恐れて全体を研ぎ澄ますように作らなければならない……と身構えていた。


組み立てはごくシンプルで、完成後には見えなくなるエンジンが用意されているほかは、ほとんど外から見えるパーツを貼り付けていくだけで完成する。ボディ以外を全部真っ黒にして、ホイールだけ銀に塗ればとりあえずミニらしい見た目にはなる。もちろんこだわる向きは内装を好みの色に仕立ててもいいだろう。

1/43のカーモデルというと、もっと大きなスケールの模型に見劣りしないようひたすらこまかな工作と塗装で精密感を出さなければいけないと勝手に思っていた(とくに1/43のメタル製キットなんかはパーツ自体も繊細で、勢いで組み立てられるようなシロモノではない)。しかしエレール特有の「カタチは確かだけどどこかおおらかな雰囲気」を前にして、これならなんとかなりそうだと塗装の下ごしらえを済ませる。
ボディはピカピカのツヤではなく半ツヤくらいでも充分に見栄えがする。ウインカーもクリアーオレンジで塗るより、ただのオレンジ色を筆でツルンと乗せるくらいがくっきり見えてちょうどいい。シルバーの塗り分けだけは面相筆で注意しながら乗り切って完成。ミラーはほとんど点留めで接着することになるのが設計上の弱点だ。

クローズアップで見れば小さく解像度のやや低い模型だが、遠くに置いて眺めるとずいぶん存在感がある。惜しむらくは国内における希望小売価格が4180円とかなり値が張ることだ。エレールが本国で設定している10.99€という価格(タミヤの1/48スケールの乗用車を考えれば順当な感覚だ)を考えると、輸入その他にかかる経費を含む妥当な売価と言えるのかもしれない。とはいえ、模型店ではどうしても他の製品と価格を比べてしまうのが人間の性質。これくらいのカロリーと適度な難度で楽しめる模型を欧州の人々と同じように1800円内外で手に入れられる環境がもし整えば、余暇の使い方もずいぶんと変わるのではないかと感じた。