

モデラーの間ではロボットプラモデルの手首の造形は重要なファクター。そうはいってもロボットプラモデルの構成要素全体からすれば、特徴的な顔やシルエットに比べて「優先順位の低い要素」でもある。個々のロボットの特徴でないのであれば極力コストを割かずに簡素に済ませたい箇所でもあり、そのスタンダートは40年以上前から「武器の柄を差し込む穴の開いたコブシ」なのである。

玩具的処理ではなく、しっかりと造形されたモノが欲しい! という需要に応える別売り製品はすでに数社から出されている。そんな「ロボットの手首」の新製品として今年(2023年)にリリースされたのが30MMハンドパーツセット。組み換えによるロボットのカスタマイズを楽しもうというコンセプトの30MMシリーズに対し、特にシルエットが変わるわけでは無い「キット付属の手首に対してディティール面での上位互換」という意味において極めて特異なオプションだといえる。

ただ、このハンドパーツの特異性はそのシリーズ内での立ち位置だけに留まらない。どういう訳か想定された換装カスタマイズの対象である「30MMシリーズのキット付属の手首よりひと回り(あるいはふた回り)大きく」作ってあるのだ(!)。メーカーの製品紹介を読み込んでもさっぱり理由に触れられていないんだけど、シリーズに設定された敵対する3勢力(地球連合軍/バイロン軍/マクシオン軍)のデザインに対して「2勢力分はキット標準の110%、残る1勢力の分は120%サイズで用意しました」という思わず「なんで?」と思ってしまう仕様。10%毎の差って結構あるよ……。

「カスタムして大柄になった時のバランス調整」とか「一回り大きくなった方が手首の演技が映えるから」とか、より良い効果を得るためならそれをセールスポイントとして推すべきだと思うのだけど、とくにそういう事でもなさそうで、漠然と元キットよりひと回り or ふた回り大きくなったことアナウンスされているのだ。個人的には手首がひと回り大きくなったバランスがカッコいいと思うので実用上問題は無いのだけれど、ちょっと不思議な商品仕様。

そして、ここからが本題?というかオチなのだけど、そんな「ちょっと大きく造形された」おかげで「ポリキャップと同じランナーに入れる構成の都合上手首が小さくなってしまっていた’90年代後期のオールドキット」の改造に具合のいいサイズ感になっている、というのが楽しい。ディティール面に限っていえばまだ物足りないところもあるのだけれど、そのサイズ感、グレーの色味、そして少パーツ故の手軽さと相まって箱を開けたらサクサクと手首をあてがうところまですすめられる。古いキットの袖口への取り付けはボールの径が違うので加工が必要になるけれど、この手の改造を楽しみたい人なら何とかしていける範疇だと思う。

改造用の「ロボ手首」としては安価だし、他の改造に使えるジョイントも同梱されているので手首に限らず、30MMに限らず「ロボットプラモ改造」のスターターパックとして試してみてもイイ。「手首だけでもジョイントだけでも、この値段で買うかなぁ?」と思っちゃいそうな価格設定だけど、セットならありかなと思える構成の巧さは流石だなと思う。手首がこのサイズになったのは未だに謎だけど……謎の功名だね!(そんな言葉はない)