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おおらかなプラモデルに気負わず挑め!/タミヤのランチア ストラトスターボ

 2018年にシルバーメッキボディの特別仕様として発売されたけど、「やっぱストラトスといえばアリタリアカラーでしょ」という皆さんのためにタミヤがランチア ストラトス・ターボを往時のカラーリングで再販してくれました。ストラトスといえばラリーカーですが、1977年に発売されたこのキットはオンロードのサーキットを走るために作られた仕様、いわゆるシルエット・フォーミュラと呼ばれるタイプ。これはこれで趣があるし、当時の空気感を色濃く伝えてくれる貴重なプラモっすよ。

 タミヤのプラモの箱の横には「おもな使用色」が書いてあって、お店でどの塗料を買えばいいかのガイドになってます……が、指示されているのは白と赤だけ!そういうことにして楽しむ「縛りプレイ」みたいなのもアリなんすよ。現代のカーモデルはこまかいところまでキチキチにパーツ化してあって緻密に塗り分けてリアリティを追求するのがフツーだけど、この当時はモーターライズキットだった。「買ってきたらバリバリ組んで、モーターと電池載せてガーッと走らせて楽しい!」というタイプの模型だったんですよね。だから現代でも「バリバリ組んで(中略)楽しい!」を実践するのがこのキットとの相性良い向き合い方だと俺は思う。

 ボディはこれでワンパーツ。ランチア・ストラトスの強烈なウェッジシェイプを囲むように直線的なエアロパーツがボッコボコ追加されてもう別人みたいです。金型は結構きれいに磨かれていますが、そこかしこの線が太い感じで迫力満点。この迫力のまま突き進んじゃいましょう。

 白いランナーにはドライバーのアニキとホイールとリアウイングと消火器と……丸いドーナツみたいなのはブレーキディスクだ。シンプルだし、車の魅力がちゃんと伝わるし、なにより「プレイバリュー」ってもんがあります。冒頭で書いたようにホイールだけ赤く塗ると箱絵に近くなるね。

 もう一枚のランナーは黒!パーツはコレ以外に窓とタイヤがあっておしまい。どシンプル。最近のカーモデルを作っている身からすれば「少ない!」って思うかもしれないけどアオシマのTHE・スナップシリーズも言ってみればこんなもん。実写の完全再現とかこだわりの細部表現とかじゃなくて、ゴリッと車の形を楽しもうぜという声が聞こえてきます。まあレーシングカーだしこのへんは実物もだいたい黒でしょう。よし、塗らないで組むぞ。

 金属シャフトで左右のリアタイヤを繋いで、フロントは簡単なステアリング機構(モーターで走る使用だった頃の名残で「その場でぐるぐる回るようにステアリングを固定できる仕組み」もおもろい)に金属のピンをズドンと入れておしまい。一瞬でシャーシができて、あとはボディ乗せたら工作自体はほぼおしまいです。10分くらいでどうにかなる。そう、君はアリタリアカラーのボディが見たくてこのプラモを買ったんでしょう?もしくは、これから買うんだ。

 最難関はデカール。ボンネットの無数のルーバーの上にデカールを貼るのは難しそうだし塗装で表現しようかなどうしようかな。うまくなったら貼れるかな。それはいつかな。少なくとも今じゃないかな……(箱を閉める音)……。ちがーう!いま貼るんだよ!退路を断とう。かっこいいと思って買ってきたプラモを作るのは君だ。しかも、いまの君。せっかくの白いボディ、黒いシャーシ。もういきなり一枚デカールを貼っちゃおう。ボディに。

▲マークソフターを塗りたくったのでひと晩放置します。青年よ、デカールをいじるな。

 そしたら猛り狂ったエンジンは咆哮を上げ、あとはもうアクセルを踏むしかない。スタートラインを切るのがなによりいちばん大事で、それがうまくいかなかったらもう一回模型屋さんに走れば定価で買える。何年か経って再度買おうとしてもプレミアが付いていて、手元のデカールが黄ばみ、さらに新しく買ってきたプラモが目の間には山積み……いつまでたっても手がつけられないなんてことになったらプラモデルがもったいないぜ。

 ほら、俺はまずいちばん怖そうなボンネット上のデカールを貼った。貼っちゃったのだからもう後戻りはできない。そしてアリタリアカラーにテンションはダダ上がり。おおらかなプラモだ、おおらかに楽しもう。2周目のラップタイムを上げたければ、2個目を買うのも今なら簡単。おめでとう再販。作った奴が、かっこいい。みなさんも、ぜひ。

からぱたのプロフィール

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

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