

F-4ファントムIIってめっちゃ有名な戦闘機だし世界中のメーカーからプラモデルが発売されてるし、みんな気合いを入れて模型を作る対象なんだけど、模型誌で特集するとまあビックリするほど売れないんです(経験あり)。みんなもファントム好きでしょ……って語りかけたところでハタと気づくわけです。「その”ファントム”って、みんなの脳の中で同じものを指しているのか?」と。

デイトンのアメリカ空軍博物館にはたしか、2機のファントムが展示されていました。ひとつは偵察型のRF-4Cで、グレーの迷彩だった。機首にシャークマウスが描き込まれているんだけど、これは個人的に「ファントムだけどファントムじゃないんだよな〜」みたいな気持ちになるヤツでした。機首にレーダーや機関砲じゃなくて偵察に使う巨大なカメラを無理やり詰め込んでいるから、カタチがどうもファントムっぽくないのだ。いや、でも離れてみたらたしかにファントムだな……。

わたしがいままででいちばん「これがファントムだ!」と思ったのは、同じアメリカ空軍博物館のF-4E。見るからにベトナム戦争で活躍していましたよ〜っていう塗装と、やる気全開の武装てんこ盛り状態です。ファントム大好き人間じゃなければ「だいたい同じじゃねーか」というこち亀みたいなツッコミを入れたくなるかもしれませんが、よく言うでしょ。アメリカで飲むコーラの味は日本で飲むのとちょっと違う、って。これはもう、知識じゃなくて感覚の問題だと思う。

ロンドンのイギリス空軍博物館に行くとブリティッシュファントムが展示されているんですが、これまた実際に見てみるとものすごくグラマラスで脂の乗った魚のような張り具合。色使いもアメリカのそれとは全然違う。そもそもエンジンが違うしお尻も大きいし、それはプラモでも再現されてるでしょ……みたいな前情報がなくても、ちゃんとにじみ出てくるんですよ。「イギリス人が作ったファントムだなぁ……」というオーラが。形だけじゃなくて、佇まいが違うんです。

そんで航空自衛隊ですよ。ビタビタの雨に濡れたRF-4Eはでっかいシャークマウスと黄土色×緑色の塗装がマッチしていて、偵察型であるにも関わらず「あれ、これもまた真にファントムですね……」みたいな気持ちになる。日本のファントムはもうすべて引退しちゃったけど、こうしていろいろ並べてみるとファントムってどんな衣装も似合うヤツなのかもしれません。
こんなふうにF-4ファミリーって「特定の飛行機」と見せかけて、パッと思い浮かぶ万人に共通のイメージが希薄なんです。作る人の数だけ理想像があって、それを追いかけるとなると、みんながみんな同じ方向に向かって走るわけじゃない。機首が短くてズドンとしたやつ、スラッと長くて機関砲が入ってるやつ、空母から出ていって海の上で戦うのか、基地からドカーっと飛んでいくのか、めっちゃ派手な塗装なのか、めっちゃ地味な塗装なのか。それをぜーんぶ集めて並べたのが、今回のスケールアヴィエーション最新号というわけ。

にじみ出てしまうお国柄、長寿ゆえに作られたいろんなタイプ、そしてあまりにも機体が多いので「もしかしたらこんなんがいたのかも」と思わせる架空機もアリにしてしまうあたりがMSVっぽさの所以。そして、そういう遊び方をガバーッと楽しめる(そして抱きとめてくれる!)のがファントムモデリングのいいところなんでしょう。
製作期間2ヶ月、いま買えるキット縛り!なのに今号のスケールアヴィエーションには160機もの楽しみ方がずらりと並んでいます。ここ数年でファントムの模型はめちゃくちゃ盛り上がっていますから、あなたにもきっとお気に入りが見つかるはず。巻頭グラビアを飾っている東雲うみちゃんも「これがいい!」ってひとつ選んでいるわけですから、こりゃもうファントムを作るしかないわけです。誰に強要されるわけでもなく、周りの空気を読むでもなく、「オラがファントムこそ最強にかっこいい!」っていうプラモデルに、この号を読んでトライしてください。世界の空が、きっとあなたを待っているはずです。