徹頭徹尾、理解を求めて組むプラモ。/MODEROID アーハン

▲少年野球でおなじみの軟式球くらいの球体からロボットに変形する。

 「どうなってるのか知りたい」という欲求を満たす手段としてのプラモデルを組むというのがある。プラモデルを組み立てることを通してモチーフの構造や仕組みの理解を得ようというヤツだ。
 MODEROIDOアーハンはそんな「知りたい欲求と向かい合う」プラモデルの典型なんじゃないかと思う。アーハンっていうのは2014年公開のアニメ「楽園追放」に登場するロボット。敵か味方か何者なのかっていうのはアニメを見てもらうとして、その特徴は「球体から変形して四肢を持ったロボットに変形する」こと。

▲変形した後に換装できる見栄え優先で造形された掌や武器類がオプションとして用意されている

 どうやって?そう、その「どうやって?」を知るにあたって変形機構を再現したプラモデルを組んでみるのだ。完成品のアクションフィギュアや合金トイでも知れそうなものだけれど「変形するように造られたオモチャの動かし方」より一歩踏み込んだ「変形する仕組み/構造を成り立ちから理解」できるのが自分で組み立てるプラモデルというメディアのいいところだと思う。

 今、組まされているのはどう機能する部品なのか?飛行機や車に変形するなら箱画を見れば変形した時のどの部分が手足のどこに対応するのかという見当がつくものだけど、このロボットは「球」に変形するのでややこしい。手足も胴も頭も、箱根細工のように「分割された球の一部」を構成するのだから……

▲カイコの繭をカットした標本のような変形機構の詰まり具合にドキッとする。

 このキットの変形には2か所ほど一旦外して付け替える「組み替え変形」となっている箇所がある。ロボットの時に左右背面にくるその部品は、他の個所を一通り球に変形させた後に正面側に付けなおして変形完了。え、どうやってこの部品はこんな位置に移動してくるの?なんともケムに巻かれたような気分とともにロボットはメカメカしい分割線の巡らされた球体となる。

▲最近はタブレットのおかげで卓上でも文字通り「画面と突き合わせて」検証できるようになった。

 実際のところ?劇中ではどうなっているの?まさか劇中でも宙に浮いて別の位置に「差し替え」てるの?とアニメを見返す Ah, han ? アニメメカ好きなら変形シーンを繰り返し見てどう変形するのか考察したりするのだけれど、プラモがあるとそれも捗る。今回の場合、結局のところ「本当はこうだ!だって画面ではここに変形アームが見える!」みたいな明確な答えはさっぱり見つからなかったのだけれども……

▲球体からの変形とは別に差し替え再現のブースター。こちらも画面に向かい合うほど Ah, han ? ってなる変形だ(!)。

 アニメを見ても解らない。ふた昔くらい前まで人気アニメは当然のように設定資料集が発行されて「正解」のアテにしたりもしたのだけれど、ひと昔前くらいには設定資料集が発行されること自体が珍しくなってしまった。それこそ昔は単発劇場アニメのロボットなんていうのは設定資料集を眺めながら、「プラモデル出ないかなぁ?」と思っていたのに、今はプラモデルを眺めながら「このロボットの設定資料が見たいなぁ?」等と思っている。あべこべだ。こんな未来が来るとは夢にも思わなかったよ。

 つまるところ1ユーザーでしかない僕らには設定画資料的な意味での答えはもう解らない。それでもキットはここにある。ここまで組んで、ここまで理解は進んでいる。アームの2,3本も付け加えたら完全変形になるだろうか?未知の力で移動しているに違いないと納得するべきか?ここからは「プラモデルを作る」のではなく、自分なりの「答えを作る」ターンになる。プラモを組んでただけなのに、ずいぶん遠くまで来れてしまった気がするな……

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HIROFUMIX

1983年生まれ。プラモデルの企画開発/設計他周辺諸々を生業にしています。