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凱旋モデリングのススメ/いわき植田の玩具店から37年越しに眠りを覚ます銀色のスターファイターの話

 旅先で買ったプラモが手元にあるのなら。誰かに、何かに、還すつもりで作るのがいい。自分の机に飾るためじゃなく、その土地のために作ったら、きっとプラモはもっと遠くへ飛ぶに違いない。オレはこの春、それをひとつ実現した。めっちゃ気持ちよかった。

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 去年の春、nippper副編集長フミテシの故郷であるいわき市植田町で開かれた「いわき春のタンまつり」という模型展示会に参加した。フミテシの兄が営んでいたビストロのフロアは、床も壁も優しい木の香りを纏うステキ空間だった。温かな時間を封じ込めたようなそのテーブルを、僕らは模型で満たした。

 すぐ近くには「おもちゃのトダ」という玩具店がある。古く幼少期のフミテシを育んだお店は、老舗でありながら恐ろしく豊富で幅広い品ぞろえで、おじいちゃんとおばあちゃんがいまも元気に商売をしている。参加者や来場者が展示会の休憩がてらに代わる代わる足を踏み入れる店内で、オレは埃をかぶったひとつの箱を棚から抜き取った。ハセガワの大ベテランモデル、1/32 F-104J/Gのパッケージには「1987」の年号。フミテシがまだ4歳だった頃に入荷し、そこから37年ものあいだ、誰かの手に取られることを待ち続けてきたのだ。

 旅先のテンションで買った模型は、家に着くころには少し色あせて感じることが多い。でもこのときは違った。次の春、また植田に戻ってこれを展示するんだと、最初から決めていた。ビッグスケールなりの歯ごたえと存在感のあるキットに、オレはモデルアート社のNF-104A改造パーツを組み込み、工作や塗装に奮闘した。デカールは納得の行くサイズと色調を求めてオーストラリアのサードパーティーメーカーからわざわざ取り寄せ、調子のいいものを選んで貼った。でも、今回はそれが本題じゃない。主役はオレではなく、キットだ。

 今年開催された「いわき春のタンまつり 2nd」は、でっかいF-104にとってこれ以上ない凱歌だった。棚で37年眠り続けたプラモが、もう一度、美しい銀色を纏ってあの場所に戻る。そのためにオレは手を動かしたし、思いどおりに仕上げるための遠回りも、全部嬉しかった。模型を作る理由はいつもまちまちだ。でも、楽しくて、美味しくて、あたたかい土地とそこにいる人たちに「ありがとう」を伝えたくてプラモデルを作ったのは、今回が初めてだった。作る手が止まらなかったのも、その想い(と、展示会という「締切」)のおかげだ。

 完成したNF-104Aが、植田のビストロの窓際で陽を浴びる。飛行機にも展示会場にもきっと似合うに違いないと信じて用意した大きくて重い木の台座には、去年おもちゃのトダの前で撮った写真を貼っておいた。「これ、去年トダで買ったのを完成させたんです」と伝えると、プラモデルに詳しい人も、そうでない人も、みなとても嬉しそうな顔をしてくれた。38年の歳月が思い通りの空間に収まって、たぶんこのプラモデルはようやく役割を果たしたのだ、と思った。

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からぱたのプロフィール

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

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