先日箱を開けたMODEROIDのHAL-X10。今回は満を持して実食です。結論から書くと、設計者やメーカーの「こういうプラモデルにしたい!」という気持ちが感じられるキットでありました。
まず一発目の工程、胴体上部のパーツを切り出すところでいきなりオッと思ったんですが、このパーツ、ゲートが全部ダボの先端に配置されている。ダボなら上から別のパーツが被さるわけで、ゲート処理だの白化だのは特に気にしなくて良くなりますね。他のゲートもできる限り隠れるような位置に配置されておりまして、気が利いてるなあ~と思った次第。
X10の機体上部には戦車っぽい形やディテールがあり、そこにいきなりレイバーの頭が生えていてすごいわけですが、その中には戦車のペリスコープみたいなガラスがはまってるっぽい箇所があるんですね。そこにはまる透明部品が、機体パーツの裏側で全部つながっている。ササの根っこみたいな感じになっており、1パーツをバチッとくっつけたらもう全部ガラスがはまっているわけです。
他にも透明パーツがはまる箇所は割とこうなっており、単純だけど楽。機体サイズが大きいのでそもそもの部品の量も多めなわけですが、こういった工夫でできる限り部品を減らしてバチバチ形になるキットにしよう、という気遣いを感じます。う~ん、サービスされている……。
前回も書いたんですが、「ディテールの再現と部品の少なさを両立しよう!」というやる気は透明パーツ以外からも感じられまして、たとえば機体後部のホバーユニットとの接続部はドカンと1パーツ。これをくっつけて、さらにその周囲を囲うパーツ(これも1パーツで成形されている)を取り付ければ、色分けの効果もあって、もう機体の後部ができあがっている。「劇中でのX10と照らし合わせてこのディテールは正確か否か」というのを気にする人も少ないのではないかと思いますし、「大きいものがガンガン形になったら気持ちいいでしょ?」という方向からのアプローチとして理解できることだなあ、と思います。
あと、絶妙だなと思ったのが関節の構造と可動範囲。シーリングのカバーを模した関節パーツはABS製なんですが、これがなんとも絶妙な粘りと固さにチューンされており、そのまま組んで立たせてもヘタらない。なんせこのX10、ホバーユニットも含めるとけっこう重たいんですよね。にもかかわらず脚がガッチリ胴体を支えており、自重で倒れたりしない。そしてそれだけの保持力があるのに、固すぎて動かせないというわけでもない。これはけっこうすごいことだと思います。
あと、膝を動かすための軸は一箇所のみなんですが、位置と関節ユニットの形状が絶妙なのでかなり深いところまで曲がる。個人的に引き出し式の関節も膝やら肘やらの二重関節やらがあんまり好きじゃないという心情があるんですが、この構造には思わずニッコリ。頑丈でわかりやすくていいよね、一軸関節!
反対にちょっとややこしい動き方をするのが、ホバーユニットの噴射口部分です。ここは「軸の位置が前後にずれた板状のパーツが、斜め下に向かって開く」というかなり三次元的な動きが特徴。ということで、板状の噴射口の両端がボールジョイントになっていて、それが斜め下に向かってグッと開きます。これは動かしてみないとわからない!劇パトの冒頭でもここが開いてX10が浮き上がるシーンはあったし、「ちょっと無理してでも絶対開閉できるようにしたかったんじゃ!」という設計者の気持ちを感じます。
完成すると堂々たる大きさ。同じ1/60スケールだしということでダイアクロン隊員を横に立たせてみたんですが、「家か?」というくらいのサイズ感です。こんなにデカかったのか、X10。これと生身で戦わされた自衛官の皆さんはさぞかし怖かったことでしょうし、テレビ版5話の冒頭でX10に遭遇したカップル、よくあの程度のリアクションで済んだな……。
というわけで、組み終わってみれば「デカいメカがスピーディーに形になる」というMODEROIDの持ち味をキープしつつ、特異な動き方をするロボットである面白さや劇中での印象的なディテールを盛り込んだ意欲作だったな……という印象。プラモデルに盛り込まれている、設計者なりメーカーなりの「ここがやりたかったんだよ!」というポイントを見ると、おれはなんかちょっと嬉しくなります。そんな嬉しさや楽しさはきっちり感じ取れるキットだったかと。とにかく完成時のボリューム感と満足感がすごい割にすぐ形になるので、軽率に手を出しても全然オッケーですよ!
ライター。岐阜県出身。元模型誌編集部勤務で現在フリー。月刊「ホビージャパン」にて「しげるのアメトイブームの話聞かせてよ!」、「ホビージャパンエクストラ」にて「しげるの代々木二丁目シネマ」連載中。プラモデル、ミリタリー、オモチャ、映画、アメコミ、鉄砲がたくさん出てくる小説などを愛好しています。