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プラモに線を手描きするなら、細筆界の長距離ランナーでKeep Runnning!

 普段の模型屋さんには無いアイテムとの出会いを求めて、ショッピングセンターに店を構える手芸屋さんによく寄ります。今回ご紹介する筆はトールペイント(木工品に絵入れをする民芸のこと)に使う用品が並んだ一角で見つけたもの。このスクリプトブラシ、本来は文字を書くためのもので、トールペイントでは植物のつるなどを描くのに使うそうです。特殊な見た目ですが500円前後とお求めやすい価格です。

 アシーナのスクリプトブラシ、ラヴィア7300シリーズ。直径1mm穂丈13mmの#10/0から直径2mm穂丈24mmの#2まで6種類のラインナップがあり、1.9cmの#00を愛用。

■息を止めてのライン引き。面相筆では塗料が途切れる!

 このスクリプトブラシをカーモデルの窓枠ゴムやモールを塗るのに使っています。こういった細かい部分に筆ムラを残さず塗るコツは、息を止めてスッと一息で塗ること。一般的な1/24の自動車だと、最低でも車幅分の5~6cmは塗り足さず一息で走り切りたいところです。ところが、模型用の面相筆では途中でカスレてしまいます。筆では思ったように塗れなくて、タミヤペイントマーカーやマスキング&エアブラシで塗ってしまうこともしばしば。そこで見つけたのがこのスクリプトブラシです。

■ケビン・シュワンツ気分で長い穂先を端まで使いこなせ!!

 スクリプトブラシは一般的な面相筆と比べると穂先が倍ほど長く作られているため、塗料をしっかりと含みます。そこそこ腰のある毛先は見た目に反して扱いやすく、ただちょっと保管に気を遣います。使ってみると、まるで万年筆のように同じ濃さでどこまでも線が引ける。サンプルとして愛用の#00でプラ板とアオシマ1/20ステップバンの窓枠をラバーブラックで塗ってみました。

 上で示したように、スクリプトブラシは塗料をよく含み、1/20スケール軽自動車の窓枠の一辺を端まで塗り切る力があります。返す刀で断面だけじゃなく表側も塗れました。

▲面相筆では途中からカスレはじめ、端まで届きません。

 私はタミヤエナメルのラバーブラックを使うことが多いので、塗りながらいつもバイクの耐久レースをイメージしています。熟練のレーサーが序盤と終盤でバンク角を変えてタイヤのグリップ力を使い切るように、筆の腹の根元側で塗り始めて少しずつ穂先へ。プラモデル用塗料は粘度が高いので接するポイントを変えて補ってやると、濃さを保ったまま長いラインが引けます。

▲スクリプトブラシの長距離ランナーぶりが分かるよう、プラ板にタミヤエナメル塗料でラインを引いてみました。


●真っすぐ引いてスクリプトブラシ=13cm、面相筆4cm
●筆を回しながら引いて、スクリプトブラシ=20cm、面相筆6cm

■筆の素材はナイロン

 高級品な筆はセーブルと呼ばれる獣毛を使っています。中でも高級品のコリンスキーはイタチ科のシベリアイタチやクロテンの尾の毛から作られるそう。寒い地方に暮らす生き物が持つ毛の構造が絵の具の含みのよさに繋がっています。今回お薦めするアシーナのラヴィアはナイロン繊維ですが、セーブルの使い心地を再現したというゴールデンタクロン(Taklon)製。このタクロンはヴィーガンや獣毛アレルギーを持つ方のメイク用ブラシにも使われています。

■耐溶剤性についての注意

 筆はそれぞれ用途に合わせて作られているので、本来の用途以外に使うと短期間で傷んでしまうことがあります。アシーナのラヴィアが使っているアクリル繊維はもともと耐溶剤性の強い素材ですが、本来の用途はアクリル絵の具や水彩用。シタデルカラーやタミヤアクリルにはピッタリですが、タミヤエナメルやMr.カラーのような有機溶剤を使った塗料はメーカーの想定外かもしれません。少なくともツールクリーナーのような強い溶剤は避けた方が無難と思います。このスクリプトブラシを2年以上愛用して毛の抜けなど目立った劣化がないことを確認していますが、念のため書き添えておきます。

 スクリプトブラシは筆の使い勝手でペイントマーカーのように延々と線が引ける、私にとって救世主のような筆でした。あなたの細部塗装への苦手意識も、ひょっとしたら1本の筆が変えてくれるかもしれませんよ。

chill reactor
chill reactor

旧車雑誌『高速有鉛デラックス』でライターとして活躍中。最近はアメリカンカープラモを楽しんでいます。

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